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意見
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さわやか福祉財団
(理事長 堀田 力)
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1 |
一般的な非営利法人制度 |
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1−2 社団形態の法人
NPO法に準じて規定すべきで、理事等の任期制限等は不要。基金は別法とする。
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1−2 非営利法人規定全般について、中間法人法を考慮しつつ立案されているが、特定非営利活動促進法(NPO法)に準じて立案すべきである。NPO法人は、本法に定める非営利法人の特別類型に当たるのであるから、一般法人である非営利法人の規定が、特別法人であるNPO法人の規定よりも、同種の事項(たとえば、組織の基本的骨格)についてより厳しいのは、不合理である。中間法人は煩雑に過ぎるとして実務上不評であったのであり、その轍を踏むべきでない。
1−1−(3)−A−ア 理事等の任期制限は不要と思料する。同じ志を持って長期間業務遂行に当たる役員等を必要とする法人も存するからである。任期制限の必要がある法人(官庁や親企業からの天下りのある法人等)は、定款で制限すれば足りる。
1−1−(3)−A−カ(理事会の権限)も、定款で定める事項であろう。
1−1−(3)−A−キ(理事の報告義務)も、同様。
1−1−(5) 基金については、別法で規定するのが相当である。
基金を必要とするのは、本法による非営利法人に限らず、NPOや社会福祉法人等特別法による広義公益法人や共益法人についても同様であると認められるところ、基金に関する規定は、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の例外規定となるものであるから、広く各種公益法人等の法人が利用できる法律として定めるのが適切であると考える。
その場合、規定は、基金拠出者保護上必要不可欠とされる最少限度に止めるべきである。ただし、無利息返還規定は必要。
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1−3 財団形態の法人
公益性を要件としない財団法人は、有害無益であり、認めるべきでない。
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1−3 公益性を要件としない財団法人は、次のとおり有害である。
1 |
相続税脱税目的で、家産を基本財産に拠出し、家族が業務従事者になる等の形で財団法人を設立する道をより広める。 |
2 |
財産の使途が、公益目的以外の目的に固定され、資産の有効活用が阻害される。 |
3 |
債務免脱目的で財団法人を設立する道をより広める。
そして、公益性を要件としない財団を設立することに対する正当な社会的ニーズがあるようには見受けられない。
にもかかわらず、原案がその設立を認めることにしたのは、一般非営利法人から公益性を有する法人を認定する方式(いわゆる二階建方式)にしたため、公益性のある財団の設立を認めるためには、その前段階となる公益性を要件としない財団を認めるほかないと判断したためと思われる。
この段階で、二階建方式を一階建にせよとは言わないが、二階建方式は、明らかに公益性を有する法人に対しても一般非営利法人の過程を踏むことを要求する等、無駄が多い。そこで、公益性の認定をあらかじめ行い、その効力発生を非営利法人の登記の時とすれば(この意見は、後記2−3に再掲)、二階建方式のままで当初から公益性のある法人を設立することが可能になる。
そして、このような制度にすれば、「公益性のない財団法人は、設立することができない」と定めることが可能になるであろう。
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2 |
公益性を有する法人の認定等に関する制度
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2−1 総則的事項
公益的事業の定義に、営利を目的としないことを付け加える。
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2−1−(1)の定義を「(不特定かつ多数の者の利益増進を)目的とし、収益を得ることを目的としない事業」とする。
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(理由) 不特定多数の利益という定義で、共益事業と私益事業は排除されているが、営利事業が排除されていない(営利事業も、不特定多数の顧客の利益を増進するものであるが、事業者の目的が収益を得ることにある点で、公益的事業と異なる)からである。 |
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2−2 認定基準等及び遵守事項
目的・事業及び財務の規定を整備し、実態及び政策目的に沿うものにする。
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2−2−(3)「各事項を柱に」とあるが、行政による恣意を防ぐため、全要件を法律で定める。
2−2−(3)−@「目的・事業」を、次のように整理する。
ア |
公益的事業であって定款に定めるものを行うことを主たる目的とするものであること。 |
イ |
公序良俗を害するおそれのある事業を行わないこと。 |
ウ |
特定又は少数の者の利益を増進に寄与することを目的とする事業(共益的又は私益的事業)及び収益を得ることを目的とする事業(収益事業)は、下記エの範囲内で行うこと。 |
エ |
公益的事業に係る総稼働時間(ボランティアの稼働を含む)が、原則として全稼働時間の半分以上を占めること。 |
(代案)公益的事業に係る事業費(無償で又は謝礼金のみを得て稼働する従事者に係る人件費については、労働市場の基準で評価した人件費の価額により計算する)が、原則として、全経費の半分以上を占めること。
なお、管理費は、直接的な事業経費の割合に応じて按分すること。
(理由) 上記アは、現実には、地域における経営環境等の変化により、公益的事業が営利事業としても成り立つこととなったり(その場合、公益的事業として行うべき基盤が失われる)、その逆になったりするため、その判別を理事・評議員に委ね、柔軟に実態に即応させる体制にするため。
上記ウは、共益的・私益的事業(時に、収益事業として行われる場合がある)及び収益事業を禁ずる理由はないので、合わせて従たる範囲で行うことを認めるもの。
原案は、「営利事業と競合する性質を有する事業活動等」を禁じているが、公共法人及び公益法人(広義)が行っている公共事業・公益事業で、受益者から負担を徴収するか行政が費用を負担しているものは、ほとんどが営利事業と競合する性質を有する事業なのであって(教育、福祉、医療保健等の分野の事業が典型。法人税法施行令5条に列挙される業種に付された除外事由に規定される事業がすべて該当)、これを禁じるのは、公益的事業の否定となる。
競合する事業(競合する性質の事業とするのは、現に競合しない多くの事業を含むから、不当)については、課税してイコールフッティングを図れば足りる。
上記エは、実態として、公益事業については、ボランティアが無償又は謝礼金だけで稼働することが少なくない(特に、福祉、芸術、町づくり、教育、環境等の分野)ため、法人活動のマンパワーは主として公益事業に注がれているのに、財務諸表だけを見れば、公益事業の経費が半分以下になっているなど、事業費は実態を反映していない。
なお、管理費も、事業のための基礎的経費であるから、区分できないものは按分算入すべきである(実務では、そうしている)。
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2−2−(3)−B 「財務等」のア、イ、エを整理する。
ア |
(資産維持義務)は不要と思料する。公益事業は、寄附金、補助金等により支えられることが多いところ、これらの資金を得るための措置は考えにくい。
アの規定が永続基金についてのものとすれば、それは、設立時に多額の基金を集めることを要求するものであって、資産運用益でなく寄附金等によって運用を行う多くの公益法人を締め出すことになる。 |
イ |
(株式等保有の禁止)は、「リスクの高い資産運用は行わないこと」とすれば足りる。 |
エ |
(内部留保)は、規定を置くとすれば、「公益事業を維持、発展させるのに必要な限度を超えて内部留保を保有しないこと」とする。
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2−3 認定の手続等
行政当局からの意見聴取をやめ、一階建に準じる設立を認め、民間公益優先原則を規定。
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○ |
行政庁による関係行政機関の長からの意見聴取に関する手続規定は設けてはならない。「現在の主務官庁から中立的に判断を行う」という平成16年12月24日閣議決定に反する。
これに代え、2−5に「有識者委員会は、事実関係を調査し、関係者の意見を求めることができる」旨の規定を置く。 |
○ |
NPO法に準じて、認証期間を制限する。 |
○ |
非営利法人の登記と同時に発効する条件で認定を行うことができる旨、及びその手続を規定する(前出1−3の項における意見参照)。 |
○ |
認定は、申請書類に基づいて行うのを原則とし、非営利法人としての活動実績や財務状況については、申請者に有利に考慮することができる旨規定する。なお、申請書類の虚偽記入に罰則を設ける。 |
○ |
認定を行うに当たっての原則として、民間公益優先の原則(民間の担う公共が、行政の担う公共と重複することがあっても、民間の担う公共活動を認める)を掲げる。
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2−4 行政庁による監督
市民によるチェックを重視。税務当局の権限行使との重複を避ける。ウは不要。
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○ |
市民の眼により事業運営の適正化を図ることを重視し、市民の情報提供を推奨する手続を設ける。 |
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○ |
行政庁と税務当局が別個に調査することは、調査する側、される側ともに二重手間となる。両機関に対し、資料の共同利用と重複調査回避とを義務付ける。 |
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○ |
ウ(全額使用命令)は、民間の自律性を侵す過剰な介入であり、イ(勧告)で足りると思料する。
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2−5 有識者からなる委員会等
有識者を民間人に限定し、民間人主体の事務局を設け、決議に拘束力を持たせる。
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○ |
組織に関して、有識者は民間人に限定し、官僚OBの数を制限する。
また、調査等を担当する事務局を設け、職員の相当数は民間出身者とする。 |
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○ |
委員会の権限及び職務は、内閣総理大臣の諮問ではなく、法令の規定及び委員会の決定によって発生することとする。 |
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○ |
委員会規則は、委員会が定める。 |
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○ |
委員会の決議は内閣総理大臣を拘束することとし、大臣は、委員会に異議を申し立てることができることとする。 |
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(理由)原案は、公益法人制度改革に関する有識者会議が、民間性、独立性、中立性を持つ有識者会議の役割を強調することにより、従来の主務官庁の支配の弊害を打破するとしている報告(平成16年11月19日同会議の報告書13、14頁)に反するものである。同有識者会議が「議論の中間整理」等において広く国民の意見を問うた過程で、国民の関心がきわめて高かったのが民間有識者による委員会であったので、これに関する報告内容を骨抜きにしようとする原案は、国民に対する背信となる。
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2−7 公益的事業
不要。的確に網羅することは不可能であり、あえて規定すれば多様な公益事業を制約する。
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公益的事業の例示が不要と考える理由は、
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1 |
公益的事業の定義は、2−1 総則的事項及び2−2 認定基準等においてなされており(前出2−2−(3)−@ 目的、事業に関する意見参照)、これをもって足りるから、例示は必要がない。 |
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2 |
公益の目的を「福祉の向上」等と列記して網羅することは不可能であって、あえてこれを列記すれば、一方において、列記から洩れた公益事業の認定を制約する運用が生じると共に、他方では、営利を一次的目的とする事業者が、列記された目的に当たる事業であることを理由に、一次的目的を秘して、公益事業の認定を求める足がかりに利用されるおそれがある。 |
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3 |
社会的視点からふさわしくない「不特定多数の利益の増進に寄与する事業」は、公序良俗に反するという要件で排除すれば足りると考える。 |
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4 |
複雑な事業につき、列記された公益のどれに該当するかを判断するのは、エネルギーの浪費である。
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3 |
現行公益法人等の新制度への移行
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3−3 特例民法法人に対する新法の適用
移行の効果(人格同一性の保持)を規定し、NPO、社会福祉法人等への移行も認める。
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○ |
移行とは、人格の同一性を保持したまま法人設立の根拠法令又は法人格の名称を変更することである旨定義する。 |
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○ |
特例民法法人の人格を維持したまま、NPO、社会福祉法人、学校法人等特別法による法人の認証、許可等を得ることができ、得た時は移行できる旨規定する。
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