あなたは、親友を持っていますか。
私の中学生時代には、何人かの親友がいました。
中学一年の時の親友は、数学や理科がとびぬけて出来る男で、家にはわけのわからない実験器具がたくさんあり、彼は実に楽しげになにやら混ぜ合わせ、色を変えたり煙を出したりしていました。文系の私は、彼の熱中ぶりにあっけにとられながら、尊敬の念を持って彼のすることに見とれていました。
彼は変わり者と見られてよくいじめられました。ぼうっとしていじめられているだけの彼を、私はいつもかばいました。私は、理科おたくの彼の純粋さが好きだったのです。私は二年になって転校し、彼とのつきあいはなくなりましたが、あれから半世紀、おそらく彼は、名声とかお金とか、世俗的なことは一切求めず、こつこつ研究を続けているだろうと想像しています。
●●意見がわかれる男女の親友
中学三年の時は、男と女の親友がいました。
二人ともスポーツの名選手で、私はスポーツがまるでだめなものだから、二人にあこがれていました。
男の親友は勉強もよく出来て、私が読んだ本の感想を話すのを、感心したように聞いてくれました。私がそのころ読んでショックを受けたのがスタンダールの『赤と黒』で、主人公のジュリアン・ソレルの自己中心的な考え方に驚いたのです。ジコチューはよくないと思い込んでいたのに、それが小説のヒーローの考え方や行動として堂々と描かれているのです。やっぱり人間の本質はジコチューだと、私は一挙に大人になった気がして、親友に、そう語りました。彼は、「なんかひねくれてるな」と言いながらも、一生懸命理解しようとしました。
一方、女友達の方は、そんな勝手な男はダメだと、明確に反対しました。「そんな嫌な主人公みたいになったら、彼女との間をとりもたないよ」と私を脅しました。その女友達は、私の彼女の親友でもあったのです。中学三年の時の親友とは、今もつきあっています。
●●自分にない何かを持っている
私の場合、親友は、私にない能力を持ち、あのようになりたいなぁと思っていた人です。そして、おそらく相手も、自分にない何かを私に見つけて、いいなぁと思ってくれていたように思います。そう思える人と、何の損得関係もなく、語り合え、一緒に時を過ごせる中学時代は、人生に二度とない貴重な時代だと思います。
|