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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2005年9月16日
要支援者への対応

 介護保険制度の見直しで、明年4月から認知症の人など特定の人を除いて、要支援及び要介護Iの人に対する従来の生活支援サービスは廃止されることとなる。
 この改革の底辺には、増加の一途をたどる介護保険の支出を抑制しようとする思惑があるが、表向きの理由としては、自ら行うことが可能な家事などについても介護保険のサービスを利用する依存傾向が生じ、介護保険の目的とする自立をかえって阻害する結果を生じるようになったことが挙げられている。
 依存は好ましくないから改革が必要であるが、問題は、介護保険のサービスを補うため地方自治体が行う地域支援サービスが、むしろこれまで以上に、依存傾向を生じさせるものになるおそれがあることである。
 もちろんこれらのサービスも、理念としては自立支援のために行うのであるが、自立支援というのは、簡単なことではない。本人に自立を志向して頑張る、強い意思がなくてはならず、また、支援するヘルパーさんも、本人を励まして、本人にやれることは本人がやるよう上手にリードする意思と能力がなくてはならないからである。
 介護保険制度によるサービスが自立支援にならなかった原因は、仕組みに由来する。要支援あるいは要介護Iの認定を受け、受けられるサービスの額が決まると、自己負担分の支払いをする人は、受けられるだけのサービスを受けなければ損だという意識になる。自分がやれることでもサービスを受けて楽をしたほうが得だと思うのは、人の情である。一方、ヘルパーさんのほうも、ケアプランで調理、掃除などと特定されたサービスをやることになっている以上、これをやるのがその職務であるから、「ここまではあなたがやれるから頑張ってやりましょうね」とは言えない。介護保険制度は、ヘルパーさんに対して、自立支援の精神でサービスするよう指導することができない仕組みになっていたのである。
 新しい介護予防の制度では、たとえば食事についてはメニューの指導に止めるなど、本人の自助努力に待つ姿勢を打ち出しているが、これまでサービスしてきたことをやめるのは容易ではない。結局そのサービスを地域支援サービスで引き継ぐことになるケースが多いと予測される。その地域支援サービスのほとんどは、事業者に委託して行うことになる。ところが、委託事業は、申し出により事業者に対し「調理、掃除」など、形式的にやることを指示して行われることとなるのが、これまでの多くの例である。これでは、これまでの介護保険サービスと変わらないだけでなく、これまで以上に形式的に行われるおそれすらある。
 本人の自立努力を促すことが堂々とできるのは、実は、家族とボランティアである。愛情と信頼に基づく対等の関係だからこそ、「それはあなたがやれるのだから、私はやらない。頑張ってやってみて」といえるのである。そういう視点からいうと、地域支援サービスは、ボランティアの精神でサービスしている市民団体が受託して行うことが好ましい。
 ただし、市区町村(地域包括支援センター)との形式的な委託・受託の契約でやるのでは、ボランティア精神は発揮できない。地方自治体との話し合いで、「協働」事業としての協定を結び、ふれあいボランティアのやり方でやることの了解を得ることが、地域支援事業に参加する前提となると考えている。

(『さぁ、言おう』2005年9月号)
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