年金問題にやっと国民の関心が集まってきた。議論は混乱しているが、焦点は、孫の代まで安心できる年金制度をつくれるかである。
その答えを一口でいえば、孫が高齢者になった時もしっかり保険料を負担する若者たちがいるかどうかにかかっているということである。それがいなければどんな仕組みをつくってもダメである。
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「2030年の人口予測図」=図参照=は、見通しが甘いと非難される国立社会保障・人口問題研究所の予測であるが、これによっても日本人の人口は、子々孫々に至るまで減少していく。それでは、公平で安定した年金制度は築きようがない。
そこで、図に太い棒線で書き込んだように、日本の人口は、毎年百十万人生まれるものと仮定した人口図を作成する。そして、この釣り鐘型人口が、子々孫々の代まで続くという前提で、年金の負担と給付を決める。単純化した例でいうと、この人口図で平均して四十年働き年収の四分の一を保険料として納め、その後の二+年間はもとの平均年収の二分の一の年金を受け取るというように、平均値を基にして負担と給付の割合を固定する(この割合は国民の合意による)。人口構造が同じ釣り鐘型のままで続く限り、負担と給付は、どの年代であろうと同じままで安定して推移する。
日本はピラミッド型人口構造から釣り鐘型人口構造へ移行し終え、やや行き過ぎて逆ピラミッドになっているのを徐々に修正しつつあるところであるから、やがて釣り鐘
型に落ち着き、そのまま何世紀にもわたって安定すると予測される。
ただ、負担と給付を安定させるためには、制度の前提としている釣り鐘型人口図と現実の人口図とのギャップを埋める作業が必要である。そこで、釣り鐘より外にはみ出る部分(団塊の世代およびその子の世代)に対する給付分は、保険料収入以外の特別収入をもってまかなう必要がある。私は、その部分は、相続税の増税、保険金積み立て分の取り崩し、国の財産の処分収入などをもってまかなえばよいと考えている。このように人口が大きく釣り鐘型をはみ出る現象は、おそらく人類史上一度しか起きない人口構造転換期における特異現象であるから、特別な出費でまかなうのが世代間の公平を保つために必要だと考えるからである。
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もう一つのギャップが、現実の人口が釣り鐘より少なくなる部分で、今後生まれる世代は、次第にそうなっていくと予想されている。この部分については、少子化対策にいっそう注力するとともに、優良な外国人の移入推進策によって対応すべきである。アジア諸国には、今後三十年くらいは、日本に移民する意欲を持つ有能な人々が存在すると思われる。それでも現実の人口が釣り鐘型より少なければ、その分負担と給付を微調整すればよい。その数値は、あらかじめ予測できるから、大きな混乱を招かないであろう。
年金改革については、長期の見通しと努力目標を立て、関係する諸政策を総合した抜本的かつ長期的対策を立て、国民の合意を得なければならない。党派を超え、ひろく国民各層の参加を求めて、ねばり強く立案作業を進めるべきであろう。
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