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提言 ビジネス(人事・組織)
更新日:2006年7月12日
「なぜ、ボールから逃げるのか?」

ピッチに倒れこんだ中田ヒデが訴えたかったこと
 
  日本のW杯サッカーが終わった。ピッチに倒れたままで選手に合流しなかったヒデ(中田英寿)の姿が、幕切れのシーンとして何度も放映された。
 
  あれは、彼の仲間たちへのメッセージなのだと思う。「もっと前向きにやれよ、もっと走れよ」と言いたかったのではないか。
 
  インタビューで、「これが日本の実力だ」と言ったのは、気持ちを整理したうえでの発言で、「こんなことでいいのか」というのが、彼の心の叫びのように感じた。
 
  外国のプロからも、「日本はシュートをしない」と言われている。
 
  職場にも、シュートを避け、他人にボールを渡す部下、あるいは上司がいっぱいいるのではないか。
  
日本人の仕事意欲はこんなに低いのか

月刊誌「プレジデント」7月17日号の記事「日本人の働く意欲は世界最低」(岡田恵子・中村健太郎氏)には驚かされた。米国の大手人材コンサルティング会社のタワーズぺリンが企業で働く人々の働く意欲について世界16カ国を対象に行った調査では、日本は「非常に意欲的」なのはわずか2%。4割が意欲的でない、というのである。同誌の表紙から、各国の「非常に意欲的な従業員」の割合を示す表をお借りする。

  「えっ、ホントか!?」と思うが、就職して3年以内の退職率が中卒・高卒・大卒者それぞれで7・5・3とか、フリーター・ニート現象とか聞くと、「なんとか働いている人たちも、意欲を失いつつあるのかな」という気もしてくる。
 
  「どうしちゃったんだろう、大丈夫か、日本」と心配である。
  
逃げる原因とその対処法
 
  私は、東京地検特捜部、法務本省とか、辞めたあとのボランティアの世界とか、やる気のある人たちが集まる集団の中でやってきているので、恵まれている。
 
  それでも、シュートを避けるばかりか、自分に来たボールへの対応も不十分で、しかも人に責任転嫁するタイプの人に、たくさん出会っている。
 
  そういうタイプの人は、どんな仕事をしてもそうで、しかも口だけは結構達者な人が多い。中には、ボールが来そうになるとさっと身を隠す天才もいて、「その優秀な予知能力を、仕事をこなす方に生かしてくれたら素晴らしいのに」と口惜しく思うことも少なくない。
 
  私の長年にわたる観察結果によると、そういう人は、仕事が楽しくないのである。向き不向きではなく、どんな仕事でも楽しくない。自分に向いているというので自ら飛び込んできたボランティアの世界で、なおかつ基本的に逃げの姿勢でいる人たちがいて、そういう人たちを見ていると、そう思わざるを得ない。
 
  察するに、彼らは、「仕事は真面目に取り組まなければいけないものである。真面目に取り組むことは、辛いことである。だから、できればしない方がよい」という感覚が身体に染み付いているように思う。
 
  どこでそうなったのか。それは、「勉強」であろう。上のカギカッコ内の「仕事」を「勉強」と置き換えてみると、よくわかる。彼らは、無理矢理やらされた勉強がよほど辛くて、そういう人生感覚を形成してしまったのであろう。
 
  その人生感覚を職場で変えるのは容易ではない。
 
  となると、「この人は、ボールから逃げたがる人」として処遇していくほかない。憤慨すると、ストレスがたまって損するだけである。

(NIKKEI NET Biz-Plus ビジネスコラム「なぜ、ボールから逃げるのか」―第3回(2006/07/07)
(URL → http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/hotta.cfm
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