また人事の季節がやってくる。私は、介護保険の新総合事業における「助け合い活動の創出」を担う生活支援コーディネーター(SC)、行政や社会福祉協議会の担当者を念頭に「市民主体の事業を担当する職員の異動は専門職待遇で、短い期間での異動は避けることとし、昇進はジェネラリスト並みとする」と提言している(堀田力・服部真治「私たちが描く新地域支援事業の姿」中央法規出版 2016年)。
しかし、相変わらずSCや担当者の異動は激しく、住民は「やっとなじんで呼吸が合うようになったと思ったら、ゼロに戻って一から信頼関係をつくらなくてはならない」と嘆いている。人事担当者は、住民との信頼関係ができなければ進まないという事業の特徴などおかまいなしに「人事のルール」に従って異動を考える。行政の方から住民主体の活動を仕掛け、多くの人々に苦労をさせながら、その成果を無にする無神経さにがっかりするが、嘆いてばかりもおれない。
最善の対応策は、兼職にしないことである。これが事業としても王道で、たとえば鹿児島県奄美市、愛知県犬山市、新潟県柏崎市、北海道美幌町などは、住民から迎え入れた第1層SCが事業の当初から専従で素晴らしい活動をしておられる。
ただ、実態としては、いろいろな事情があって、行政、社協、地域包括支援センターの職員をSCに任命しているところが結構多い。SCの任務は兼務でやれるような甘いものではない。せめて専従にしてほしい。兼職だと人事のルールを免れなられないからだ。
中央共同募金会の常務理事渋谷篤男さんは、市町村が相互にSCを定期異動する仕組みなど、工夫が必要ではないかとおっしゃっている。他の地域へ出向の形になるだろうが、異なる地域でさまざまな経験をするから、SCの能力向上に加え、業務のレベルアップ効果もあることは間違いない。
千葉県流山市の健康福祉部長早川仁さんはSCの任期を5年とし、最初の2年は先任と新任の引継機関とし、任期4年目に後任を任命して2年間の引き継ぎに入るという提案をしておられる。
住民主体の事業を後援するという業務の特殊性を考慮した人事ルールを確立してほしい。
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