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提言 福祉・NPO・ボランティア
更新日:2005年9月16日
厚生福祉に関する基本政策

 厚生福祉に関する基本政策を立てるための仕組みで、気になっていることを三つ書く。いずれも省庁の縦割り行政に関することである。
 一つは、厚生福祉と経済、労働との関係である。
 社会保障には飛び抜けて多額の歳費が投入されているし、この分野で働く労働者の比率も高い。しかしながら、経済構造の改革を進めるに当たっても、労働の在り方を考えるに当たっても、この分野が経済あるいは労働の視点からどうあるべきかを真正面から考察されることは、あまりないように思われる。経済の関係では負担増、規制緩和(株式会社の参入)などの視点から、また、労働面では失業率の改善などの視点から論じられてはいるが、それだけでは全体像はとらえ切れない。
 厚生福祉の分野の仕事はグローバル産業でもなくIT(情報技術)産業でもないが、まぎれもなく人の不幸を救い、より幸せな生活を実現する、人間の根源的欲求を充足する仕事である。これを充実することは、経済構造を考える上でも社会構造を考える上でも、最優先の目的とされるべきである。市場経済やボランタリー経済の仕組みを、どのような条件でこの分野に取り込むか、そして公共財の在り方をどう変えて、この分野を充実するか、さらに、この分野における労働の理念を労働原理にどう反映させるかなど、総合的見地からの検討が至急進められなければならないだろう。
 二つは、厚生福祉と教育との関係である。
 厚生福祉の分野は、人はなぜ生きるか、人はなぜ助け合い、どう助け合うのか、人と人との関係では何が大切か、そもそも人類は、どのようにして生存していくかなど、人という存在の根幹に関する問題を具体的事象として提起する。そして、これを考えることがこの分野の仕事に従事する際の態度に決定的に影響する。その教育が、不足しているように思う。
 三つは、厚生福祉と入国管理との関係である。
 少子高齢化は、日本の社会、経済すべての分野に巨大な影響を及ぼすが、福祉や医療には、即時、直接的な影響が生じる。その緩和には、入国管理政策が一つの決め手になるが、その政策を総合的見地から検討する機関がない。このままでは将来に禍根を残す恐れがあると考えている。

(厚生福祉掲載/2004年2月6日)
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