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提言 福祉・NPO・ボランティア
更新日:2005年9月16日
理想の福祉社会

 理想の福祉社会とは、どんな状態にある人も、その尊厳を十分に保持して生きることができる社会であると考えている。
 その社会の鍵を握るのが、ケアマネジャーであろう。といっても、介護保険法に定める役割だけを果たすケアマネジャーではない。
 尊厳を保持するのであるから、例えば車椅子(いす)の人が音楽会や美術展に行きたいといえば、誰かがつきそって行かなければならない。痴呆の人が俳徊(はいかい)しだせば、誰かが見守って、歩くがままに歩いてもらうことが必要である。施設暮らしはいやで、思い出の詰まった自宅で最後の時を送りたいといえば、三百六十五日三食サービスはもちろん、医療、看護から話し相手まで、必要と希望に応じて多様なサービスを自宅に届けなければならない。
 それだけのサービスが整った社会になってはじめて、“すべて国民は、個人として尊重される”(憲法一三条)ことになり、“人類社会のすべての構成員の固有の尊厳”(世界人権宣言前文)が保持されるという理想がこの世のものとなる。
 厳しい財政事情を考えるとそんなことは不可能だと思えるが、目を地域社会に転じると、頼もしい芽があちこちで育ちつつある。例えば大阪府羽曳野市では、小学校単位の「ふれあいネット雅び」が生まれ、医師から近隣の人々までが参加して、重度の人について、その人ごとにその身体と生活と心(尊厳)を支える仕組みができつつある。「どんな人にも、最期までその人らしく生きてほしいから」と、地域のリーダーが眼を輝かせて語った。「いずれ、重度の人だけでなく、援助を必要とするすべての人に、それぞれの人のニーズと思いに対応できる個別のネットワークを組みたい」と、ネットに参加している人の思いは高い。現に、理想の福祉を目指して、地域の人々が動きだしているのである。私たちも、頭だけで否定する態度を改め、理想追及に参加したいと思う。
 ネットワークのキーは、ケアマネジャーである。介護サービスだけでなく、ボランティアや近隣の人など、あらゆる社会資源のサービスを幅広く、存分に引き出し、組み立ててほしいと思う。現に、NPO(民間非営利団体)所属のケアマネジャーは、そういうプランを立て、実行し始めている。

(厚生福祉掲載/2004年6月25日)
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