京都市は「居場所」の開設や運営に助成金を出し、これを広めようとしている。居場所はそこに集う人々の間に温かい交流を生み、地域の助け合いの基盤をつくるから、京都市のこの政策は、共生の時代のさきがけとなるものだといえる。
我がさわやか福祉財団も5年前に京都市で「ふれあいの居場所普及サミット」を開催したが、その際パネリストとして登場してもらった新潟市の河田珪子さんが、この秋から居場所「うちの実家」に新しい試みを導入しておられる。「実家の手」という有償ボランティアである。
「うちの実家」で300円のチケット(1綴り6枚1500円)を発行、「うちの実家」に来た人はこれを1枚置く。食事代にも使えるほか、会員にボランティアとして助けてもらった時、その謝礼にも使える。このようにチケットが会員相互の助け合いの輪を循環して使われる点が、典型的な有償ボランティアと違うところである。これまでの有償ボランティアは、助ける方の会員と助けられる方の会員とが分かれていることが多かったが、居場所のつながりから生まれる有償ボランティアはまさにお互いさまで、助けたり助けられたりする関係になっている。
実は、居場所に集う人々の間の「ちょっと重い助け合い」に時間通貨を使うことにしたのは、静岡県袋井市の居場所「もうひとつの家」を運営する稲葉ゆり子さんである。この通貨「周」はおしゃれな手作りで、それ自体に魅力があり、換金はしない仕組みである。それでも謝礼にこれを受取った人は、すごくうれしい気持ちになれる。
居場所と有償ボランティアを組み合わせているのは、河田さんより早く、大分県竹田市の「暮らしのサポーター」である。その熱心な推進者高木佳奈枝さんによれば、「地域の住民が気軽に立ち寄れる寄り合いの場を作り、そこを拠点として生活支援サービスを有償で展開」している。その成果は期せずして「実家の手」と同じで、お互いさまの関係をつくり出している。
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