助け合い活動を広めようと頑張る市民も自治体も、困っている。国土交通省の陸運関係出先機関が、時代遅れの法解釈にこだわって活動を邪魔するからである。その結果、地方はもちろん都市部でも外出難民が増え、自宅で暮らせなくなって福祉の施設などに入居している。
問題の法律は道路運送法である。タクシーやバスなど陸運業者を規制する法律で、戦後1947年、旧道路運送法が施行された。事業者が増え、利益追求のため危険な運転をする者が増えたため事業許可制にした。すると白タク事業者が輩出したため、運輸省(現国交省)は、「有償」運送の解釈を広くしてその取締りをしやすくした。
白タク業者も少なくなった1990年代、いわゆる有償ボランティアが増え始め、外出支援もするようになった。高齢化が進み、謝礼金で継続的に移送してもらうニーズが高まったのである。ただ、これは従来の解釈だと白タク営業になる。市民の声に押され、国交省は2006年、法制度として福祉有償輸送を認めたが、対象を限定するなど認める範囲が狭すぎる。そのうえ、この運送は地元タクシー事業者が同意をしないと認められず、現に同意が得られない地域も少なくない。法改正が必要である。
それよりも基本的に求められるのは、「有償」についての法解釈を正しく変え、正当な謝礼を伴うボランティア移送を認めることである。道路交通法による規制(一般の運転免許など)以上に、道路運送法による重い規制が必要なのは、営利を目的とする事業者が過当な競争による危険運転を行うおそれが構造的にあるためである。有償ボランティアは、継続して運転するのでガソリン代プラス謝礼(報酬や対価ではなく、最低賃金以下程度のお礼)を受け取るが、儲けは全く考えず、競争もしない。明確に区別できる白タクと同視して規制するのは、過剰、不当な規制である。
現場では無償の移送に対して住民がカンパすると「有償」として禁じられたり、寄付された車で無償の移送をすると車の寄付が有償として禁じられるなど、信じられない行政指導が行われている。時代遅れの解釈・指導が、地域包括ケア(在宅の充実)にも地方創生にも不当な制約になっている。
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