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提言 福祉・NPO・ボランティア
更新日:2017年3月9日
B型が広がらない

 新しい総合事業のB型(要支援者などに対する助け合いによる生活支援サービス)が広がらない。

 特に、介護予防訪問介護が問題である。

 従来の給付事業を助け合いに代えていこうというのが新制度の趣旨だから、これはまずい。その制度面の原因は大きく三点が考えられるが、その対策は、関係者の知恵も頂いてなるべく早い機会に提言することとして、ここでは助け合い活動を展開する側の原因を考えておきたい。

 介護保険制度ができる前は、全国各地の有償ボランティア団体が身体の不自由な在宅生活者を支えていた。生活に困っておられる高齢者などを見捨てておけなかったからである。

 介護保険制度ができ、特に介護予防が制度化されてから、有償ボランティア団体は減っていった。

 今回再びこれらの活動を復活させて、要支援者などの生活を支えようということになったのだが、新制度では助け合い(B型)をやらなくてもA型のサービスで彼らの生活は支えられる。つまり、制度発足前と違って、目の前にそれほど困っている人はいないのである。これでは、よしやろうというインセンティブは湧いてこない。といって、A型サービスを廃止するような乱暴なことはできないから、新しいインセンティブを見つけるほかない。

 それは、「いきがいの創造」であろう。「助け合い」は「サービス」と違って、助けられる方もまだまだ残っている能力を生かして、人や自分に役立つ活動をする状況を生み出すことができる。双方にいきがいと尊厳が生まれ、双方の人生の質が向上する。居場所において、参加者それぞれが家事や編物、文芸その他趣味の腕を発揮したり教えたり、装飾品などを造ったりするのが典型であるが、調理や掃除の支援においても、本人ができることは一緒に行い、そこでできる部分を伸ばしつつ協力して物事を達成するよろこびを実感する。ささいなことのようだが、身体が不自由になりつつある人にとって、その充足感は大きい。

 いきがいを生み出すには人の幸せを願う熱い心とゆっくり相手の行動に合わせるやさしい心が必要である。人が備え持つそういう心を社会に生かすことをもって新しいインセンティブとしたい。

(「厚生福祉」2017.3.7掲載)
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