政治・経済・社会
(財)さわやか福祉財団ホームページへ
 
提言 生き方・その他
更新日:2005年9月16日
「人生の四季」 カネは天下の回りもの(12)
働けるのに年金をもらうなんて

 愛知県の丹下多栄美さんは年金制度改革に関するアンケートにこう書かれた。
 「『年金をできるだけ多くもらって遊んで暮らしたい』という考えから、『働けるだけ働いて、収入を得、税金も納められるようにしよう』という考えに切り替えたい。高齢者自身の経済的、精神的自立が不可欠である。そして精神的、経済的に若い世代を支えたい。少なくとも若い世代のお荷物にならないようにしたい」
 丹下さんの心意気が伝わってくる文章であるが、同じように、「まだまだ頑張るぞ」という高齢者が多い。樋口恵子さんと私とで代表を務めている高連協(高齢社会NGO連携協議会)が昨年暮れに行った調査では、モニター八百十四人のうちの七割が、「年金制度改正では定年制を廃止し、高齢になっても多様な働き方ができる社会にして、収入のある高齢者人口の増大を図り、広く薄く保険料を納入する」ことが大切だと答えている。
 この就職難の時代に高齢者の仕事をどうつくるのかとたちまち反発されるのであろうが、何も一人の人間を徹底的に働かせるだけが効率化ではない。むしろ逆で、特に若い者は従来の働かせ方にはとてもなじめない。トータルで経費を増やさず、労働生産性を上げるワークシェアリングという手がある。職員の研修や苦情処理などにOBを使う方法もある。
 何より大切なのは、能力に応じで柔軟な働き方ができる仕組みをつくることであろう。それは高齢者だけでなく子育ての支援にもなるし、いろいろな職場を経験して実力の向上を図ろうとする人々の意欲を生かすことにもなる。
 また、スタイペンド(謝礼金)という手もある。
 アメリカには、高齢者ボランティア隊というのがある。話が硬くなったついでに根拠条文をいえば、連邦法典四二編五〇〇〇条以下である。退職した高齢者によるボランティア隊には、補助金が出るし、交通費その他の実費が出るが、謝礼金は出ない。しかし、所得が少ない高齢者のボランティア隊が、支援を必要とする子どもたち、障害者あるいは高齢者のために支援活動をすると、実費のほかに、謝礼金が支払われる。謝礼金は、最低賃金以下のラインで定められ、高齢者ボランティアについてはおおむね時間三ドル弱である。連邦政府が負担する。
 これでは、保険料を負担するだけの収入にはならないかもしれないが、頑張って活動すれば、年金の減額くらいは補えるし、何よりいきいきと日々を過ごせる。介護保険その他の財政支出を節減するほか、本人の介護予防に役立つ効果も大きいだろう。先に述べた調査のアンケートに、次のように書いた人もいた。
 「無理に引退させて、まだ働けるのに年金を払うなんてバカげている」

(日本経済新聞掲載/2004年2月22日)
バックナンバー一覧へ戻る
  このページの先頭へ
堀田ドットネット サイトマップ トップページへ