旭重光章というのは、経団連会長クラスの貰う勲章である。それを、茨城県の石油販売業、関彰商事の会長である関正夫さんが貰った。関さんは、六年前から全石連(全国石油商業組合連合会)の会長もされているが、もともと社会貢献の志の厚い方で、九年前、私がさわやか福祉財団を立ち上げた時から理事をして頂いている。だから、先日行われた叙勲の祝賀会にも進んで参加したのだが、頬を紅潮させた関さんは、謝辞で、会社の幹部たちも初耳だという、事業精神の原点を語った。
「私がまだ駆け出しの三十歳くらいのころ、旧日本石油の栗田淳一社長に石油の値段について相談にうかがったところ、栗田社長はこう言われました。『君は事業を拡大して儲けることを考えてるね。そうじゃなくて、みなさんに喜んでもらうことを考えて努力し、毎年地道に頑張って、後で振り返ってみればああ良かったなと思えるような仕事をするのがいいよ』。私はそれで眼から鱗が落ち、その精神で今日までやってきました」
関さんの精神は関彰商事の社員に浸透し、彼らは、まだ日本のボランティアの黎明期である九〇年代初めから、高齢者の支援や地域の環境保持など、多彩な活動を展開してきた。
関さんは全石連の会長に就くと、全国の代表たちに「ガソリンスタンドは地域に密着した存在であり、単にガソリンを売るだけでなく、地域のために貢献できる貴重な存在ではないでしょうか」と訴えた。
呼びかけに応じて、全国のガソリンスタンドに、波が起こった。
ストーカーから女性や子どもたちを保護する「かけこみ一一〇番」を設けたスタンド(茨城など)、災害発生時に道路案内や飲料水、トイレを提供するところ(大阪など)、救命講習を行うところ(東京・島根など)、暴走族の改造車に給油しないという運動を展開しているところ(福島)など、それぞれの地域の実情に応じて、スタンドの職員たちが知恵と勇気と情熱を絞り出し、さまざまな社会貢献活動を展開し始めたのである。
徘徊老人の保護とか、安全走行の注意喚起、事故防止、路上犯罪被害者保護など、スタンドの社会貢献活動は、車から入る情報が活用できる利点と、二十四時間開業している利点を生かしており、心躍るものがある。関さん自身「このような勢いで展開していくとは予想していませんでした。日本中、助け合いの気持ちというのは誰でも持っているのだと、改めて思います」と語っている。
ガソリンスタンドは競争が激しく、利は薄く、倒産も少なくない。そういう厳しい経済的条件の中にあって、働く人たちの、人に役立ちたいという心意気が花開きつつあることが、うれしくてならない。関さんの受章に、乾杯!
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