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提言 生き方・その他

更新日:2021年12月1日

共感と反感

  感情労働という言葉がある。医療や介護、福祉など人の不幸に対応する仕事のことで、仕事の相手の不幸や苦痛に共感し、感情をゆさぶられる性質を持つからそう呼ばれる。
 仕事の相手方である患者や利用者などの立場でいうと、医師や看護師、介護福祉士などのプロは、こちらの苦痛や不幸な立場を理解し、共感してくれて、対応してくれるとありがたい。同情心のかけらもなく、冷たい態度で接されると、心が傷つく。その差は大きい。
 だから、医療界では患者中心の医療ということで「患者さま」などと呼ぶ動きもあったが、これは行き過ぎで、しらじらしい。普通に名前を呼んでもらった方が安心である。
 一方、プロの立場からすると、相手の患者や利用者すべてに、心から同情したり共感したりしていては、身がもたない。プロとはいえ仏様ではないのだから、一目で嫌になったり、反感を覚える相手もいるだろう。生意気な口のきき方をされたり、プロとしての意見を頭から否定されたりして、ムカッとすることもあるのではなかろうか。
 そんな時、どうすればよいか。プロの内輪のアドバイスは別として、表向きには「そんな時でも、相手は弱い立場なのだから、感情的にならず、冷静に理解させるべきである」と説く。
 では、自分の本心(感情)はどうするのか。
 心理学では、相手への感情は忘れて、相手をどう扱うのが良いかを配慮することに集中しようという。感情社会学では、自分の本心(感情)は置いておいて、社会的(表面的)に求められる対応(怒っていても顔では笑うなど)をしようという。そうすれば、疲れたり燃え尽きたり自分が嫌になったりしないですむ、というのである。
 それが、プロの道なのだろう。そこが、プロと助け合いボランティアとが違うところかもしれない。
 ボランティアは、本心で対応する。だから、合わなければ、おしまいである。

(京都新聞「暖流」2021.11.29掲載)

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