政府は閣議で、平成17年度末までに公益法人改革の法制上の措置を講じることを決めた。新しい法人制度についてこの11月に骨格を固め、これに対する税制の骨子は、政府税制調査会の非営利法人課税ワーキンググループ(座長=水野忠恒教授)において、平成17年の春ごろまでに固める意向のようである。
実は、財務省は平成14年2月、このグループに対し、同省が考える税制の骨子案を示している。その案は、課税強化にとらわれすぎ、民間の力を生かして国民の生活を充実させようという視点に欠けている。問題点を大きく2点取り上げる。
第1点は、新公益法人の本来事業は非課税にすべきであるということである。米英ともにそうしている。
新公益法人の本来事業であるから、その事業は当然に公益を実現するための事業である。ということは、国や地方自治体の事業と等価値だということである。国や地方自治体の収益に課税しないように、新公益法人の公益活動による収益にも課税すべきでない。なぜならそれは、その後の公益活動に投入されるものだからである。それと同じ理由で、新公益法人の本来事業でない収益事業から得られた収益も、それが本来事業に投入される時は、100%の損金算入を認めるべきである。
現行法人税法は本来事業であっても収益事業であれば課税することとしているが、これはシャウプ勧告の趣旨に沿わない。シャウプは、公益法人について個別に公益性のある活動か否かを判別して、これを有しない収益事業に課税することを考えていたと解される。
財務省は収益事業によらない収入、たとえば会費や寄附金収入に課税しないことをもって、新公益法人に対する優遇措置とする意向と見受けられるが、公益性の有無を問わず、非営利法人一般について、会費や寄附金に課税しないのは当然である。それは、事業のために拠出された資金で、営利法人における資本金等と同じ機能を果たすもので、担税力を有しないからである。非営利法人についてこれに課税しようとする財務省の態度は、理論的にも政策的にも誤りだと考える。
日本も先進諸国を追って成熟社会に入り、市民のニーズは多様化し、高度になったが、政府はこれらを満たすことができず、さらに財政難で、従来からあったニーズにすら応えられなくなってきている。ここは、ボランティア精神を持つ市民による公益活動の拡大に期するほかない。そのことが分かれば、その活動を支援こそすれ、これからまで税金を取ろうという後向きな政策は出てこないはずである。官が仕切る後進国ではないのである。
第2点は、新公益事業に寄附する者の所得計算にあたり、寄附金の損金算入を認めることについてである。第1点について述べたのと同じ理由で、すべての新公益法人についてその措置を認めるべきである。それによって寄附が盛んとなり、新公益法人が政府の満たせない国民のニーズを満たしてくれれば、政府は丸儲けではないか。財務省は、国民の幸せという高い視点から発想してほしいと思う。
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