民主党党首に前原氏が選ばれ、憲法9条の改正が現実味を帯びてきた。彼は、9条2項を改正して自衛権(集団的自衛権を含む)を規定するという論者だからである。
自衛権は国家固有の権限だから書いて当たり前で、自衛隊という現実を正面から認める正直な道だという議論はすっきりしてわかりやすいのだが、ちょっと待ってほしい。大きな問題が潜んでいる。
それは、自衛権の範囲が不明確だという問題である。
大まかにいえば、ドイツ、フランスや、法的にはその系統(大陸系)の日本の法解釈と、アメリカ、イギリス、イスラエルなど、アングロ・サクソン系の法解釈とが、かなり違うということである。一言でいえば、アメリカなどの解釈は、かなり広い。大陸系では、現に攻めにかかってくるか、まさに攻めてくる事態になってはじめて反撃できるが、アメリカなどは、攻めてくる危険性が高いという段階で攻撃できると解している。イラク戦争はその解釈の現れであるが、日本など大陸系の法解釈からすれば、イラク戦争が自衛権の行使というのは無理である。
そのアメリカとの集団的自衛権を認めるとなれば、日本の解釈では自衛権の行使に当たらない場合でも戦争に参加することになる。それは、自衛権は固有の権利で、憲法に書くのは当然という論理を越え、自衛権の行使でない戦争にも加担する事態を容認するという、大変な事態を招くことになる。
そこのところをよく考えて頂きたい。それにしても、自衛権の範囲について、国際法学者や刑法学者は、なぜ問題提起をしないのか。
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