政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2015年8月17日

夢のある任務

 助け合い活動を広めるため、生活支援コーディネーターや協議体を選ぶ市区町村が、少しずつ増えてきた。いいことである。助け合いは志でやるものだから、そう簡単には広まらない。それなら早く取り組んだ方がよい。どうせ取り組まなくてはならないし、早く取り組んだ方が認定率や保険料の上昇を抑える効果が早く出るからである。

 ところが、コーディネーターに選ばれた人も担当の職員も、「何をしたらいいかわからなくて」と戸惑っておられるケースがほとんどである。

 これは実は当然のことであって、助け合い活動やそのネットワークを創り出すのに方式はないから、自分たちで考えるしかないのである。

 どんな助け合い活動を創り出すかという任務を決めるのは住民である。だから、コーディネーターは、担当する地域の住民が、どう助けられ、どう助けたいと望んでいるか、その本音を引き出す必要がある。しかし、これはアンケート用紙を配るくらいでは出てこない。住民同士、ご近所仲間とじっくり話し合ううち、潜在している気持ちが触発され、固められて出てくる例が多い。

 地域の全戸に呼びかけてワークショップを持ったのは、神奈川県平塚市や島根県雲南市、宮崎県串間市や山形県川西町吉島地区などであり、そのように住民のニーズと参加意思を引き出した地域では、多様な助け合い活動に展開されつつある。

 ただ、住民の意向調査は、一回行えば済むものではない。住民がいつでも気軽に行ける居場所(通いの場)があり、そこでそれぞれの生活上の悩みなどがこだわりなく話され、「じゃ私が何とかする」という人が自然に出てくるような雰囲気が生まれていることが重要である。こういう地域の絆をベースにして新しい助け合いが生まれる。

 ここ数年、全国における居場所の増加ぶりは目をみはるものがある。新潟市や新潟県のように、行政がその効果を学んで、しっかり後押しをしているところは、特によく伸びており、そこに集う住民の方々の笑顔や安心感が、その地域の住みやすさを端的に表している。

 生活支援コーディネーターや協議体構成員の任務は、福祉の範囲を超えて、豊かな地域づくりであり、充実感ある生活づくりなのである。

(「厚生福祉」2015.8.7掲載)
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