「高齢社会をよくする女性の会」という強力な団体がある。強力なのは、全国に大変な数の女性会員がおられ、その多くが地域のさまざまな分野で有力な活動をしている方だから。そして、理事長の樋口恵子さんの絶妙なリーダーシップのもと、常に先端を行く社会問題に真正面から取り組み、女性の視点からの提言を一致団結して発信しておられるからである。
私も、20年ほど前に、この会の全国大会に招かれ講演をさせて頂いたのだが、その時のおそろしさは身に染み込んでいる。女性の会のひとりひとりの方は心はまっすぐ、明るく前向きでエネルギーにあふれ、まことに魅力的なのだが、これが一団となるとエネルギーがあふれ過ぎて「男は何してるのよ!」と激しい叱声になる。私は日本の男社会の罪を一身にかぶって、刑事被告人になったような気分になったものである。
だから樋口さんに今年35回目になる全国総会での講演を頼まれた時は、一瞬どきっとしたのだが、もちろん樋口さんの話をことわれるような立場にはない。
だから8月27日甲府で開かれた全国大会で、大きな会場を埋め尽くした女性軍団の前に身を縮めつつ立ったのだが、20年前とはずいぶん雰囲気が変わっていた。何というか、刺すような厳しさが消えて、まるいのである。
講演のあとのパネルでも、家事をしないけしからぬ男の話は出ず、夫に家事をまかせて好きに暮らしている話が会場を沸かせた。
そして会の副理事長袖井孝子さん(お茶の水女子大学名誉教授)の司会で各地の女性リーダーが次々に語ったのが、さまざまな形での地域活動であった。女性たちはただ不公平な処遇に怒っているだけでなく、男性を含む地域を巻き込んで、自ら社会をよくする活動を展開しているのである。名の知れた弁護士の渥美雅子さんは、武田信玄「風林火山」の詞を借りて会の活動をうたい、「地域貢献 山の如し」と締めた。
市民が主体的に動く時代になりつつある。
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