政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2020年10月30日

厳しい問題から逃げない

 菅総理就任時の発言で、日本の将来を考える機会が少なくとも2回、提供された。それは、将来を考えると増税もありうるとの発言と、もう一つは自助・共助・公助に関する発言である。二つの発言は、反発を招くやあっという間に封じられた。

 国民に厳しい問題に蓋をしてしまう態度は変わらないのだと落胆した。

 もう誰にも見えていることだと思うが、この少子高齢社会で、今のままの負担と給付を続ければ、子、孫世代に回す借金のつけはますます膨らみ、いずれ国の経済が破綻する時を迎えるということである。見えていないのは、それがいつかということと、個々の国民の蒙る被害の大きさ(その実感)だけである。

 これを避けるためには、国民の生活レベルを維持できる限度での増税と、自助・共助(互助)による社会保障費の抑制を着実に進めること以外に、実現可能な方策は考えにくい。

 その基礎的な事実をデータに基づいて直視し、国民がその将来予測の必然性を納得すれば、日本国民の多くは、必要な増税には歯を食い縛って協調するし、可能な自助・共助(互助)の努力もすると信じている。現に、私が全国を回ってフォーラムで高齢者等に対する互助の生活支援活動を勧める時、その前提として人材面と財政面で現在の給付や公的サービスの維持が困難になる状況を説明すれば、多くの住民の方々が理解し、納得して活動に参加してくださるのである。

 そういう説明をするのを怖がるのは行政の方々であり、多くの政治家であり、視聴者や読者の反発を恐れるマスコミである。確かに、直ちに反発する層が存在し、その声が大きいことは間違いない。一方で、話せば素直に実情を理解し、経済的、身体的にはつらいところがあっても、多数の他者の幸せのために協力する国民が相当数存在することは、コロナ禍対応自粛への協力ぶりだけを見ても、明らかだと思う。

 破綻してもっとも困るのは、目先の厳しさに迫られて反発している層であろう。誠実に事実を提示して、将来も持続する道は何かを真正面から議論し、将来にわたって国民を救うのが、政治や行政の責務ではなかろうか。

(「厚生福祉」2020.10.30掲載)
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