人材難と財政難から崩壊の危機が迫りつつある介護保険制度の持続策は何か。
この切実な課題に取り組んだある高齢者団体の結論は「ヘルパーさんに好かれて選んでもらえる高齢者になろう」(苦笑)。
去る5月23日放送の「NHKスペシャル」でも言われていたように、私たちは負担を覚悟するほかないが、どんな負担をするかの議論は、何をポイントとして、どんな形でやればよいのか。
危機は、ケアする人が足りないことから発生するのだから、基本的課題は、人をどう確保するかの一点に絞られる。
その対策のポイントの1は、外国人の導入をどこまでやるかである。今の導入策はかなり技術レベルを高くしているが、これを下げれば来日する外国人は増えるであろうし、今の入国管理制度で送還せねばならない人の中にも、訓練すれば適材はいるかもしれない。ただ、外国人を疎外せず、地域の生活者として共に暮らす覚悟ができるかについて国民に確認する必要があろう。
ポイントの2は、介護サービスのうち生活支援の部分を、地域のボランティアあるいは家族にどこまで提供してもらえるかである。この問題は、介護される側がどこまで専門性を求めるか、ボランティアは継続的な家事支援、外出支援をどれくらいやってくれるか、家族給付は適切かなど、国民の意向を把握しなければ判断できない。
ポイントの3は、1と2の対応策によっても、また介護の機械化や介護関係事務の合理化によっても対応できない不足分は、日本人専門職の増員によって対応するほかないが、そのために介護職の報酬をどれだけ上げればよいかである。必要な財源の確保方法は、介護保険料引き上げ、被保険者の年齢引き下げ、増税(間接税か直接税か富裕税か)による税負担部分の拡大などがあるが、どう負担するかの国民的議論は、負担なしでは介護の切り捨てになるという前提を理解した上で、データに基づいて行う必要があると考える。
対応策は、他の業界との人材の奪い合いを引き起こすし、また国民の懐にも生活の仕方にも大きく響くものであるから、官邸に幅広いメンバーを集めて議論を始めることが求められる。
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