政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2021年7月21日

総選挙…選択肢が足りない

 秋までには総選挙が行われるが、最大党派・無党派層に属する一人として言わせてもらえば、投票したい政党がない、選択肢が足りないという欲求不満にさいなまれている。
 与党自民党は右肩下がりが続く厳しい政治状況の中で頑張って政権を担い続けてくれているとは思うが、政権を脅かす対抗馬がいないために、慢心が過ぎる。多くの国民が説明を求めている疑惑事件について、納得のいくような説明はしないし、資料も出さない。
 案件だけではない。国民の負担増になるような政策については、選挙が遠い時期を選んで強行採決するのが当たり前の戦略になっている。国民の生活に直接響く政策について、なぜそうせざるを得ないのかという説明を避ける方策ばかり考える政治でいいのだろうか。
 自民党の慢心を誘発している野党は、政権を取る気のない政治をいつまで続ける気なのだろうか。せっかく是非実現してほしいと望む政策を主張してくれていても、その政策は与党が取り込んで採用してくれない限り実現の可能性がないと分かっているのでは、投票したいと思っても気持ちがしらけるばかりである。
 もしその野党が、与党の政策ではカバーしきれない経済的弱者の利益を擁護するというのであれば、そのための手段に程度の差があるとしても、目指す政策目標が同じなのだから選挙協力できるはずであり、その方が大きく国民の期待に応えることができることは明白である。
 国民の投票先を細分化して結果として投票者の無力感を招き、政治への信頼を喪失させるような姿勢を改め、国民の基本的な欲求を大きくすくい上げて希望と活力をもたらす政治姿勢で選挙に臨んでほしい。
 次に、各政党の政策について最低限守ってほしい二つの基本的ルールを述べておきたい。

■甘い公約

 その一つは、国民をカネで釣るような選挙の約束はやめてほしいということである。
 少し前の地方選挙で、住民全員に何万円かの一律給付を公約して当選したものの、議会で否決されて実現できなかった首長が報道された。
 一部学者などにもベーシックインカム(最低限所得保障)の主張をする人はいるが、財源を考えれば経済的弱者に対して行われている各種の保障を大幅に削る以外に実現可能性がないことは目に見えているのであるから、この首長のような公約は、意図はともかく選挙民をだます結果になるものというほかない。
 消費税の減税をいう公約も、減る分をどんな財源で埋めるのか、あるいは現在行っている社会保障の何を削るのか、社会保障以外の経費を削減するというなら、それはどの経費で、それを削減したらどんなことになるのか、その説明をよほど具体的に聞かせてもらわない限り、うかつに乗れない。結果においてツケがたっぷり弱者の方に回ってきてから気が付いても、遅いのである。
 財源に素知らぬふりをして国民に甘い公約(新しいサービスの約束)を振りまくのも、無責任というほかない。子や孫にこれ以上のツケを回すのはあまりに厚かましく、人として恥ずべき態度である。
 国民を見くびって事実を隠したりしないで、私たちが直面している厳しい状況をありのままに説明すれば、国民は素直に理解し、説明者を信頼する。そして共通の理解の上に立って、ではどうするのがよいか、その知恵を提供し、選択させてほしい。そうなれば、自分に厳しい政策であっても、国民はわがこととして積極的に協力するであろう。

■他者排除

 もう一つのルールは、他者を排する選挙の約束はやめてほしいということである。
 排他的主張は共感する人の団結を強め、支持を強固にする。しかし、そのツケは確実にその後の政治に回ってきて、発生する分断状態は、まともな政策の実施を困難にする。
 いかなる外国であろうと国内の特定層であろうと、その国あるいは特定国民層を完全に排除する外交や政治が成り立つ時代ではない。不都合な振る舞いや不当な利得行為は粘り強く説得して改めさせるほかないが、最終的には包摂(インクルード)して、共に生きていくことが、現代の絶対的倫理だと考える。
 排除で得をする人はいないという事案を共有したい。

(2021.7.18 信濃毎日新聞「多思彩々」)
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