政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2021年11月12日

誰一人取り残さない福祉の実現

 国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)がうたう「誰一人取り残さない」福祉を誰がどう実現するか。

 まさか、生活保護制度の存在をもって「誰一人取り残さない」というつもりではないだろう。餓死しそうになっていても、世間に恥ずかしくて生活保護を申請できない人々は、まだまだいる。

 貧富にかかわらず、すべての人にはプライドがある。人が人として、また、この世に一人しかいない「自分」として元気に生きていくのに不可欠な精神的要素である。

 では誰が、人並みの生活が難しい人たちを、人として、仲間として認めるのか。

 残念ながら、政治ではない。政治は、自民党の総裁選を見ても、諸政党の選挙公約を見ても、給付増と負担減を競うばかりで、財源は、これまで実現していない富裕層への負担増か、子孫たちへの無責任な付け回しである

 行政は、国民、住民の精神的な面に直接介入することはできない。人を人として認めることができるのは結局、人、つまり国民、住民でしかない。

 障がい者や生活困窮者、刑余者、外国人などに対し、自分たちより劣る人という偏見を持ってその人間性(プライド)を傷つけるのは、人である。確かに、人には、人を差別したり、自分で努力せず行政の給付などの措置に頼るばかりの怠惰な面があったりする。一方、人は、困っている人、元気のない人がいれば手を差し伸べ支援したり、頑張る場を提供して励ましたりする互助・共生の性質を併せ持っている。

 政治や行政が、国民、住民の怠惰な面ばかりを見て、財政破綻、公助の消滅への危険な道に進んでいるのでは、未来はない。もちろん、個人の努力ではどうにもならない格差が拡大しており、ここをしっかり埋めることは政治や行政の責務である。併せて、一人残らずすべての人が、その人としての存在とプライドを認められ、それぞれの潜在能力を生かせる共生社会を築く必要がある。

 その努力をするのは国民、住民であるが、個々人が共生の社会環境を整えるのは難しい

 政治や行政が環境の改善を誘導し、すべての人の力を生かすことが、唯一の活性化策であろう。

(「厚生福祉」2021.11.2掲載)
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