動物マニアである。だかち「地球・ふしぎ大自然」も「生きもの地球紀行」もみのがしたことがない。
もう十年近く前だと思うが、イヌワシのひなが、何日かあとに生まれた二羽目のひなを、突つきまくって殺す、なまなましい映像が放映された。親は、知らぬ顔をしている。二羽いると餌が十分与えられないから、一羽目が元気で育っている限り、二羽目は殺される宿命なのだという。ところが、その何年か後に放映された別のワシでは、三羽のひなが育っている。三羽目のひなは、先に生まれた二羽にふんづけられ、突っつかれているが、ひるまず親に餌をねだり、小さいながらに生きのびた。ここでは、餌が豊富らしく、親は、三羽目も育てる気らしい。
身近なところで、カラスは卵を産むとすぐ抱いて暖め、そうしながら産み足すのだが、スズメは全部産み終えてから抱くのだという。カラスの場合は、餌が足りなくなっても先に生まれたひなは生き残るが、スズメの場合は、餌が多ければ数多い子が全部育つが、足りないと全部餓死するおそれがあるという。それぞれに戦略をもって産み、育てていることがわかる。
ヒトの場合、十人生んで、強く運のいい二人が育つというのが生物としての戦略であったようだが、これを一人か二人に絞り込んだ。どんな子もすべて育てるという、生物としてはおそらくはじめての戦略であるが、それが成功するには共生(きょうせい)(助け合い)社会にすることが必須の条件になる。
群(むれ)をつくる猿は、餌が少ないと集団で争うが、足りている時は縄張りを守って平和である。日高敏隆教授の研究では、琵琶湖のイサザを水槽に入れ、石の数をオスの数より多くしておくと彼らは平和だが、少なくすると巣にする石をめぐって激烈に争うという。ヒトの世界の戦闘地域は、食糧や住家の少ないところのようである。
燕(つばめ)は一夫一妻制であるが、けっこう浮気者で、婚外子が四割という例もあるようだが、浮気するのは、尾の短いオスの妻で、長いオスの妻はあまりしないという。
オスが妻の浮気を封じようとする努力は大変なもので、二匹くっついてとんでいるトンボは見慣れた光景であるが、あれは精子を送り込んだあとも、浮気封じのためずっとつがったままでいるのである。ひどいのはマメゾウムシで、精子を注入したあとペニスの先から針を出し、メスの生殖管を傷つける。痛くてそれ以後交尾しないようにするためである。メスは、精子を受け取るや否や後足でオスを蹴とばして傷つけられるのを避ける。これをK-1セックスと名付けたい。しかし、ヒトも割礼(かつれい)などしているから、いばれない。
まこと、動物たちの生きざまは、真剣で、悲しく、おかしい。ヒトの場合も、また……。
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