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JANJAN映像メッセージ 発言概要
堀田力の新しいふれあい社会づくり
(2005年11月1日撮影)
No.2  「助け合いのネットワークを」
●「ふれあい社会づくり」のこれまでをどう評価していますか?

 この世界に飛び込んで約15年ですが、みんなで助け合うそういう温かい社会をつくりましょう、助け合いが必要な場面があるのでみんなでやりましょうという呼びかけにずいぶん賛同してくださる方も増えて、流れはもう確実にできていると思う。

 いまが「新しい段階」というのは、うちのさわやか福祉財団にとって、あるいは一緒に活動してきた仲間にとって、もう私どもは今までのように、こうしてこうやりましょうという役割から段々身を引いていきますよと、地方、地方で流れはできてきているのだから、ほかの、たとえば、我々は助け合いの分野でやっているが、介護保険をやっている人たち、医療をやっている人たちと行政と、ネットワークを組んでやりましょうと、自分たちの活動だけでやるのではなく、相手の立場に立って全体でネットワークを組んでサービスを提供する、お互い助け合うというそこまで広げましょう、それには地域、地域の特性に応じてやらないといけないので、わたしどもが指導してこうやってこうやってということはもうやりません、どうぞ地方でグループをつくって自分らに合った活動を進めませんかと、そういう段階まで入ってきた。そちらへ切り替えていくという点で運動の展開の仕方が新しい段階に入ってきた。

 つまりそれができるところまで日本社会が進んできたというか、行政も進んできたし、企業もまあ進んできたし、ボランティアの人たちもいろいろ学んで進んできた。
 いままでみんなばらばらにやってましたからね。それがばらばらでは駄目なんだということがわかるところまで、それぞれが進歩してきたということだと思う。

●堀田氏さんが1991年にさわやか福祉財団の前身の「さわやか福祉推進センター」を開設したときに打ち出した「20年構想」というのがある。20年間でボランティア団体5千以上、参加者1200万人というのが目標だった。どう達成したでしょうか?

 いま15年近くで、もう団体数は、はるかに5千を超えている。非常に狭く数えていっても、つまり家へ入って高齢者を支えるというところから入ったわけですが、そういうことをする団体だけでもざっと3千。それが広がって、わたしたちは居場所といっているが、お茶の間みたいなところに集まってみんなで話し合い、その中から助け合いが生まれていくというところまで数えると数は、5千どころではとどまらない。どの市町村でも小さくとも10やそこいら。ちょっと大きくなると何百と生まれている。数の点では、相当数に達したが、参加者の数が1200万といってきたのがこれが足りない。
 1200万というのはサラリーマンが1000万、学生が200万という数字で、専業主婦や定年退職の人は自然にやるから数に入れていない。学生はかなりやるようになったが、サラリーマンが、まだまだまだまだ…、なんです。数として1200万くらいは、皆さん入れれば、十分にやっているが、主な狙いであった最大の難関であるサラリーマン参加がまだまだ序の口で残っている。この牙城は厚いんです。

●介護保険制度の進み具合については?

 介護保険の改革も大きくは少子高齢化への対応の中で進めている。全体としては政策の中では一番成功しているところだと思うが、この間、韓国の介護制度導入のため講演してきたが、(日本は)ちょっと甘かったというか、依存させてしまった面が若干ありますね。やはり従来の行政とサービスを受ける住民というその構図の中でスタートさせているから、もっと本人ががんばる、もっとみんなで助け合う、これは家族だけに押しつけた、とくに女性だけに押しつけたから、それはいけないということでやったのだが、それは本当にいけないが、みんなで地域の人も含めて支える、そういうところ、そのことが非常に大事なのに、そこのところが弱かった、わたしどもはいろいろいっておりましたが、なかなか行政は、助け合いなんてあてにできないからということで、結局一部やりすぎになってしまった。こんどそこの分を引き上げて、がんばれるかぎりはがんばってもらうという介護予防の方を重点にすることにした。これは基本的にはいい、微調整するにはこれしか手がない。
 韓国はそれをやらないんですよ。韓国は日本のことをよく勉強してますね。韓国は日本でいえば要介護でとか4とか5とか、重い人だけ、まずそこからやる、そしてさらに必要なら必要なところへ広げていくという考え方だ。日本のいいところは全部入れて、日本がしたような失敗はしないようにやりますと向こうの立案者にいわれっちゃったですよ。
 自助が基本で、共助、助け合いがあって、そして、どうにもできないところが公助というこの仕組みはだいただいいいんですが、ちょっと甘かったところをもうちょっときちんとするということで。それがまた財政的には負担が少なくてすむことになる。結果として。
 公助の部分が減ることになる。助け合いがふえ、まず自分ががんばって元気にやってくれればそれだけ費用はかからないわけだから。その基本のところからつくり直しですよね。

●地域包括支援センターへの対応は?

 介護予防に対応して設けられるもので、それ自体は地域でいろんなサービスを組み合わせてやっていこうということで悪くない発想だと思うが、そのときに従来のやりかたでまかせておくと、非常に形だけのものになってしまう。わたしどもは全国のボランティアの人たちに地域包括センターがつくる運営協議会に必ず入るように、そして民間の助け合いの視点、本人の自立の視点からどんどん意見を言い、自分たちもセンターに絶えず出張っていくぐらいの精神で、まず共助の部分がしっかり組み合わさるようにリードしましょうと呼びかけている。それをやるとボランティア、あるいはNPOが行けば、本人に対してあなたはそれができるからやりなさいと言える。介護保険のヘルパーさんは言えない。雇われて、やることは掃除と調理なんて決められている。それで実際は掃除も調理もそこそこ手伝える人でもできない、させない。時間がかかるから。結局何もしなくなって寝たきりコースにいってしまう。仕組み自体がそうだ。それをもっとボランティアが入ってと。
 介護保険は国際的にも日本の改革の中でももっとも進んでいるのだが、まだまだそれでも市民参加が足りない。身体の世話だけにとどまって、仕組みはそれでいいが、もっと精神的に豊かに、高齢になっても一人になっても安心して楽しく暮らすというところが全然できていない。どうしてもみなくてはいけないところだけみているということになっている。

●医療改革の方はどうみていますか?

 だいぶ患者主体ということは言うようになったがまだまだまだ医者の力が圧倒的に高くて、診療報酬とかも医師会の意見を聞いて決めるということで、もっと患者がこういうようにしてほしいというようなこと、とくに最後の2、3か月にかかる寝たきり状態になってからの医療費がむちゃくちゃに高い。あれが医療費の大きな部分を占めている。結局、スパゲッティー状態になってしまう。そんなことはしてほしくないという思いはいっぱいあるだろうが、そういう声を引き出させない。国民は尊厳死協会をつくって細々とやっているが、制度の中でそれを認めようとしない。結局はだから医者の言うとおりになっている。国民としてはそこまで支えなくてはいけないのというところが、そこのところが全然整理されていない。こんどの医療改革でもそこのところが手つかずだ。もっと国民の意見を聞けばいろいろ変わるところがある。

 少子化だったて生め生めといっても生めるものではない。外国のいい人にはどんどん来てもらって働いてもらったらいい。現場は受け入れているのに政策転換が考えられない。市民が生活のなかで感じることが生かされない。

 働き方でもそうだ。育児休暇をとってもまた元のところに復職したいというのは人間として当たり前のことだが、それを全然指導もしない。実際には育児休暇をとれずにやめてしまう人はまだまだ多い。エネルギーを捨ててしまっている。高齢者も60年定年でまだまだ能力あるのに、生かしてもらわずくさってしまって結局受ける側にまわってしまう。経済の仕組みで高齢になったら労働力は落ちる、若いときにしぼりとるというこっちだけの視点の改革だ。ここのやり方を変えて、もっと社会、生き方、助け合いの視点から人の使い方も、経済のあり方も、行政のやり方も、医療のあり方も変えていく、そうするとかなり無駄が省けるというかいろんな能力が生かされてソフトないい社会になる。そっちのほうに全然向かわない。それがはがゆくて…。

― 次回はNo.3「地方からモデルをつくろう」の予定
(インタビュアー(文責)/ジャーナリスト・元朝日新聞論説委員 大和 修)
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2005年11月8日 No.1 「小泉改革への注文」
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