更新日:2008年1月8日 |
二大政党制への選択肢を |
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ぼつぼつ本物の二大政党が実現してよい時期ではないか。
二大政党ともに暴走する事態を防ぐために、ピリリと辛味をきかす小政党も必要であるが、日本の現状でいえば、政権を担う力のある政党が二つあって、国民がどちらかを選択できる状態にするのがベストだと思う。
その点、民主党の責任は大きい。党首が認めるとおり、政権を委ねるにはおぼつかないところがあるからである。総選挙で過半数を取るための頑張りが足りないというようなことではなくて、国民の過半数が選択したくなるような政策を掲げることができないことが、はがゆい。人材はいるのだから、その知恵を吸い上げる仕組みが硬直化しているのだろう。
一方の自民党の政策は、柔軟、つまり、なまくらではあるが、長年にわたる政権担当で、核となる支持者層はわかっているから、その政策も大まかな傾向は決まっている。
それに飽き足りない国民に対し、現実に採用可能な選択肢を示すことが、二大政党を実質的に実現するための決め手となるであろう。
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その視点からいうと、安倍内閣の政策が観念的であったのに対し、生活重視を掲げたのはよかった。しかし、バラマキは選択肢ではない。それは、多数の有権者が嫌った、古い自民党の政策である。
バラマキたくなる事情は理解できる。しかし、それこそ知恵の絞りどころであろう。たとえば地方の農家についていえば、やる気のある地方自治体の地域活性化のモデルを紹介して誘導するとか、地方に消費税率などの決定権を含め、税源を委ねる(元売りの税率も、その所在地で決めればよい)とか、農地関係法令による規制をはずすとか、情報ネットを活用したSOHOの振興であるとか、福祉や教育など、人相手の事業の振興を図るとか、農業に移民を迎えるとか、地方の創意によりいろいろなことを自由にやれる環境を整えることが大切である。
その上で、地方の自治に委ねる政策が、選択肢としてあってよい。今の政府・与党が言う程度の地方分権には不満な国民は多い。
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今国会の焦点となっている給油問題は、日本がどう国際社会にかかわっていくかという基本問題にかかわる。アメリカの核の傘下で、安全を確保し、軍事力を持たないという従来の政策は、維持が難しくなってきた。そこで、軍事力を持つ方向にかじを切るか、それとも従来の立場は基本的に維持しつつ、軍事力を用いない国際貢献策を打ち出すかを国民全体で論じ、新たな合意をつくるべき段階に来ている。
その視点からすれば、民主党が民生面での貢献策を打ち出したのはよいが、いきなり国連決議による軍事力行使にまで踏み込んだのは、国民に提示すべき選択肢として普遍性を欠く。たとえば、テロ対策用の警察力の提供にとどめるという具体策もありうるから、現段階で適切な選択肢は、「軍事力以外による貢献策をみんなで考えよう」ということではなかろうか。
それをしないで、密室で自民党党首と組み、国家の基本問題について国民的議論未了の政策を実現しようとするのは、発展途上国のような非民主的態度である。絶対にしてはならないことであって、それについては、選択肢はない。
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(信濃毎日新聞掲載/2007年12月24日) |
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