更新日:2010年1月30日 |
「友愛社会」へ見えぬ戦略
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鳩山総理の「友愛の社会」という旗印は、よい。しかし、「人に優しい、助け合いの社会」を創るための基本戦略がまだ見えない。それが立っていないと、工程表の作りようがないだろう。
第一に、教育の重点に友愛教育を置くことである。友愛、つまり共助の精神を養成するのに適した進学のシステムに変えるとともに、これを養成する教科を大幅に導入する戦略を立てる必要がある。
第二に、友愛社会を実現することを直接の目的として活動している非営利団体の支援策を打ち出すべきである。寄付の優遇を受ける認定NPO法人や公益法人の認定を絞り込んでおいて、友愛社会を唱えても、しらじらしいだけである。
第三に、友愛社会を形成するのに大きな役割を果たす非営利活動を大幅に拡大する戦略である。
非営利活動は、鳩山内閣が重点を置こうとする教育、医療、介護など「人に優しい分野」の中核となるべき活動であるが、これまでの政策が営利活動つまり経済活動の発展だけに焦点を当ててきているため、その位置付けも定まっておらず、まま子扱いである。国家戦略室を早く充実するとともにその一部局として非営利・市民活動担当部門を設け、拡大戦略を遂行することが望まれる。
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ボランティア活動を含む非営利活動は、自発性、つまり志(こころざし)と、自律性がいのちであるから、どの分野の活動であろうと、社会に実質的被害をもたらすものでない限り、支援するというのが、政策の基本となる。それは社会を明るく、心豊かなものに進化させる。
そのうえで、行政サービスを含む広い意味での非営利の活動が基本的に担当する分野を確定し、国民の合意を形成する必要がある。たとえば教育、医療、介護などがこの分野に属することは間違いないであろうが、それをどの範囲、どの程度のものにするかは、戦略を立てて国民に問題提起し、合意を引き出さなければならない。
その際、広義の非営利のサービスはすべて行政(公務員)とその下請け組織が提供するという硬直した仕組みでなく、各分野の特質に応じ、公設で営利事業への委託、非営利事業の全面担当、混合方式(介護保険における在宅サービスの方式)、併存方式(公設事業プラス非営利事業)など、柔軟な仕組みを考案する総合的戦略が必要である。
そして、それらの財源をどうするかについて、あわせて国民の合意を得なければならない。それには、国民が、自己の損得だけでなく、友愛の精神に基づいて判断する必要がある。その啓発戦略を立てることが急務である。
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さらに、これらの分野では、営利事業が参入するとしても、過度な利潤追求は認められない。そのルールと仕組みが必要である。
また、営利事業に対する規制を非営利事業にまで及ぼす現在の法体制を改め、非営利事業の自律性を確保することも、その拡大のために必要である。
非営利事業に対する寄付を旺盛にする仕組みもなければならない。
友愛社会を担う非営利活動の拡大には幾多の課題があるのに、正面から取り組む動きが出て来ないのでは、羊頭狗肉のそしりを免れないのではなかろうか。
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(信濃毎日新聞「月曜評論」2010年1月11日掲載) |
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