更新日:2009年1月5日 |
公益法人改革3法を考える
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去る12月1日に公益法人制度改革3法が施行され、これまで認められてきた約2万6千の公益法人は、5年以内に、新公益法人に移行するか、一般非営利法人その他の法人になるか、解散するかの道を選ぶことになった。
新公益法人の税制は、市民の要望に応えて相当良いものとなっており、寄付金の損金算入が認められたほか、法人税は本来の公益事業は非課税とされ、収益事業の収益を公益事業に使えば全額損金算入されるなど、やっと米国並みになっている。国税では、寄付した不動産等の譲渡所得課税の要件緩和を残す程度となった。
問題は法人制度の方で、これはいろいろと立て付けの悪い欠陥住宅というほかない。
公益法人の認定要件に無用なものが多すぎて、民間の意欲を損なう点は、別としよう。法人の財務に関する3要件のすべてに大きな傷がある。
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一つ目の柱。事業比率(公益法人認定法十五条)で、公益事業の費用が全体の50%以上というのはよい。問題は、一般管理費が、公益事業費と区別されて分母に入っていることである。管理は、経理や総務など、特定の事業と結び付かない業務ではあるが、それが公益事業のためか収益事業のためかとなると、その団体が公益事業だけを行うものであれば管理も全体として公益事業のために行う業務であるし、収益事業だけの団体だと、そのための業務である。公益事業と収益事業を行っていれば、管理はその双方のために行うものだから、事業の比率で案分することになる。
それを、別建てにしたため、実質的に公益事業を半分以上行っていても認定が受けられない弊害が生じるほか、受けた寄付金を管理費に使えず、事業の基礎となる管理費が捻出(ねんしゅつ)できない事態も発生する。早急に改めるべきである。
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二つ目の柱、収支相償(認定法十四条)は、公益事業に要する額以上の収入を得てはいけないというもので、それでは公益事業をどうして発展させていくのだという話になる。内閣府の事務当局が運用で緩めようとしており、今のところその方向はよいが、運用者が変わるとどうなるかわからないから、法律を改めるのが王道である。
収支相償の狙いは、恒常的に儲(もう)かる事業なのに公益認定を受けて脱税するのを防止することだから、公益事業がその事業によって得る収益について、それが営利事業並みのものにならないように規制すれば足りる。おかしいのは、寄付や補助金、助成金などもひっくるめて収入としていることである。寄付などは、その事業が社会に必要だが、営利事業としてはやっていけないから寄付などで支援しようというので拠出するものであって、そういう収入があること自体が公益性の証明になるものである。それを事業収入に含めて公益性を否定する材料に使うのは、暖房と冷房を間違えるようなものであろう。
三つ目の柱、遊休財産(認定法十六条)は、使うあてもない余計な財産は持つなということで、趣旨はそれでよいが、ここでも、寄付金をためた財産は除くべきであろう。悪い法人を省いて、良い公益法人をしっかり育てる制度に改築しなければならない。
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(信濃毎日新聞掲載/2008年12月29日) |
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