自民党の総裁選挙が終わると、いよいよ総選挙の季節に入る。景気が悪いから、定額減税、農家への戸別所得補償など、甘い話がいろいろ出てくる。
騙されないようにしたい。国は大きな借金を抱えて、バラマキをする余裕はないし、また、一時的なバラマキをしても景気は回復せず、国民に重いツケがまわってくるだけである。そのことは、心ある国民は過去の経験でわかっているのだが、仕事と生活が苦しくなると、つい政治に期待したくなる。しかし、借金を返すアテもなく、確実に進む高齢化に対応する資金のメドも立っていない国に、カンフル注射をさせても、そのあとがさらに悲惨になるだけである。
では、政治は何をすべきか。
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今は苦しくても、先の見通しを明るくすることである。今のようにお先真っ暗では、頑張る意欲が失われる。
国際関係では、軍事による浪費の抑制や、食物、エネルギーなどに対する投資活動の規制など、地球市民の視点に立った提言を行い、腰をすえて実現をめざしてほしい。米国追随ばかりでは、国民に直接及ぶ被害を防げない。
国内関係では、人口減少段階に入った先進国にふさわしい対応策を講じるべきである。
日本では、モノに対する国内需要が、かつての高度成長期のように伸びることは、もはや考えられない。大方のモノは行きわたり、国民が熱い思いで欲しがるようなモノの新規出現も、望めない。せいぜいゆとりある住まいくらいであろうが、これも爆発的に需要を引き起こすことは望めない。
一方、アジアには、日本が生産するモノに対する需要は、アジアの国々の経済力の向上度に応じて、さまざまなレベルで存在する。
政治がすべきことは、アジア諸国との関係を密にし、特に日本の中小企業の製品が適正かつ安全に輸出されるような基盤を整備することである。米国と喧嘩する必要はないが、知恵を出し力をつくして、アジア諸国との交流を深めるべきであろう。それがアジアの平和と発展に資することも間違いない。
一方、モノでなくサービスについては、国内には潜在的な需要がまだまだあり、増えていく。
社会が高度化するにつれ、人々の需要は、モノから人に対するサービスに移っていくから、高度で多様なサービスがより多く求められるようになる。少子化の進行により、親は子どもたちのためにさまざまな費用を歯を食いしばってでも支出するようになる。また、高齢化の進行により、高齢者のための医療・介護サービスの需要は必然的に増え、質的にも高度化していくし、また、健康保持やいきがいのためのサービスも、多様になっていく。
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これらのサービスは国内でしか提供できない。また、対人サービスであるから、大量消費による効率化はできず、多くのサービス提供者を必要とすることになる。将来的に雇用の拡大が確実に見込めるのはこの分野である。
国はこの分野の需要のさらなる顕在化を図る基盤を整備すべきである。その設計図が示され、将来の見通しが立てば、人々はトータルで巨大な額に上る個人資産を消費しはじめるであろう。
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