更新日:2014年11月3日 |
新地域支援事業に手を挙げよう |
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要支援者に対する生活支援が市区町村に移管され、住民主体の助け合い活動を核としてこれを受け持つことになった。これまで住民のボランティア活動を大切にしてきた市区町村は心の準備ができていて、さっそく新しい事業に手を挙げているが、それは少数で、多くの市区町村は様子見である。しかし、それでは間に合わないだろう。
この事業は、少しでも広く厚く、助け合い活動を展開した市区町村が勝つ事業である。「勝つ」というのは、住民がそれだけ幸せになり、地域が活き活きとし、市区町村の評判が良くなるという意味である。このところ地域の助け合いや生活環境づくり、文化活動などの充実に力を注ぎ、成果を挙げている市町村が目立ち始めているが、そういう市町村は元気で、Jターンや転入者も増え、2040年に消滅するおそれありという予測をくつがえす勢いを示している。
ただ、住民の助け合いは1年や2年では姿を現わさない。それを引き出す体制も、1年や2年でつくるのは、まず無理である。
志ある人材がある程度出て、目指す地域像を協議するなかで、各分野の有志たちの信望を集める人物が自ずと浮かび上る。その人物が、己れの足らざるところを補ってくれる支援者と組んで、地域の潜在力を掘り出す体勢を整える。生活支援コーディネーターと協議体の選出である。そこまで達するのに、1年や2年はあっという間に過ぎる。様子見をしていて、2017年4月の期限がせまってから元公務員や社協のOBなどを名前だけで選んだのでは、何年かかってもうまく行かない。
住民の心が掴めないままにこの事業を始めると、結局従来の制度に基づいて給付していた事業者が、本質的にこれまでの制度と変わらない、いわゆるA型のサービスを要支援者に給付することでお茶をにごすことになってしまうだろう。
助け合いは、助ける方も生きがいを感じて元気になり、人生が充実する。助けられる方は自立する。給付義務を負う事業者と違って、志で助けるのだから、本人のやれることまでは助けない。「自分でやってみようよ」と励ます。励まされてやり、できればうれしいから自立していく。この住民の生きる幸せを、市区町村は奪ってはならない。 |
(厚生福祉2014.10.17掲載) |
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