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     何のために勉強するのか。教師の側からすれば、何のために教えるのか。 
    その基本的な目的について、文部科学省は、「生きる力」をつけるためという考えを打ち出しています。聞いたことがありますか。「生きる力」とはどんな力なのか、わかりますか。 
     
    ●● 大家族では自然と身についた  
      今72歳の私には、わかります。 
      私たちの小・中学生時代は、第二次世界大戦の最中から戦後にかけての時代でした。ろくに食べるものもなく、しかも、兄弟姉妹の数は、4人から6人が普通でした。 
      だから、食事でもおやつでも、ぼやぼやしているとあっという間になくなって、おなかをすかせたままでいることになります。だから、食事などの時は、食べはぐれないように、しかし、ひどいきょうだいげんかにならないように、神経を張りめぐらせていなくてはなりません。 
      そのようにきょうだいの中でもまれ、自己主張したり、取引したり、おどしたりなだめたりしているうちに、生きていくための力は自然に身につきます。だから、学校で「生きる力」をつけるための教育などしてもらう必要がなかったのです。 
      一方、一人っ子や二人っ子が多くなると、食事を確保するために頑張るというようなことは、経験しなくなります。 
      そういう子を、私たちの目でみると、何となく「生きる力」が弱いなあ、これで将来大丈夫かなと心配になります。そんな背景があって、「生きる力」をつけるという目的が出てきたように思います。 
     
    ●● 好きなことに挑戦する力を  
     でも、言われたあなた方は、ピンとこないと思います。昔のことはわからないし、生きる力を何で測るのかもわからないからです。 
      そこで、「生きる力」をわかりやすくいえば、「頑張る力」のことだと理解してください。 
      頑張る力は人によって違うし、同じ人でも、何に挑戦するかで違います。でも、よく頑張れる人ほど、生きる力が強いということはわかるでしょ? 
      その頑張る力を強くするには、好きなことに挑戦することです。そのうち、頑張る力がついて、好きでないことでも、必要なら頑張れるようになってきます。 
      学校も「生きる力」をつけさせたいなら、生徒それぞれが好きなことにまず挑戦できるような教え方をしてくれたらいいですね。   
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