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定期連載 朝日中学生ウィークリー
更新日:2006年8月29日
勉強ばかりで一人閉じこめると
  私が、司法修習生として、京都家庭裁判所で見習いをしていた時の話です。
  京都でも有名な進学校の中3の男子が、パンティ泥棒をしたという容疑で、家庭裁判所に捜査記録が送られてきました。
  記録を読むと、その男子は、その中学校の優等生で、驚いたことには、お父さんもお母さんも、教師だったのです。
 
●●男子優等生の唯一の気晴らし
  その子は、お父さんから「どうしても現役で京大に入れ」と厳しく命令されていて、放課後も、休みの日も、塾へ行くか家庭教師が来るかで、夜遅くまで勉強、勉強の毎日。ただ、毎朝、学校へ行く前の30分だけ、犬を連れて近所を散歩することが認められており、これが彼にとって唯一の気晴らしでした。
  そのようにして朝の散歩をしているとき、近所の家の庭にきれいな色のパンティが干してあるのが目につきました。彼はそれが忘れられなくなり、ついに、散歩の途中、ある家の庭に干されていたパンティを盗んでしまったのです。それからは、見かけるたびに盗み、警察官に見つかって捕まった時には、段ボール箱いっぱいになっていました。これを見たお母さんは、卒倒したそうです。
  お母さんと家庭裁判所に来たその男の子は、背はもう大人と同じで、うっすらとひげのようなものも生えていました。賢そうな顔立ちでしたが、顔を真っ赤にして身を縮めていました。
 
  ●●友達付き合い、運動で興味分散
  あなたなら、この事件をどうしますか。
  裁判官は、その子でなくお母さんに、「このくらいの年になると異性や性に強い興味を持つのは自然なことです。友達と遊んだり読書したり運動に熱中したりしているとそういう興味もいろんなことに吸収され、健全に育っていくが、勉強ばかりさせて一人閉じ込めていると、今度のような不自然、不健康な形で現れるのです」とゆっくり話しました。
  お母さんは、「ハイハイ」とうなずき、「もうこんなことは絶対にさせません」と誓いました。裁判官は「ご両親に任せるから、事件にはしません。だから帰ってよろしい」と言いました。
  するとお母さんは、その子に「わかったね。これからは、もっとしっかり勉強しようね」と言ったのです。
  裁判官も私も、がっかりしました。
  では、このお母さんはどうするのがよいでしょうか。自分で答えを考えてみてください。
(朝日中学生ウイークリー/2006年8月6日掲載)
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