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これからの日本に適した教育を行うに当たっては、教育にかかわる者全員が、次のような教育の基本的な姿をしっかり理解することが必要だと考えます。 |
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めざす社会とめざす人間像 |
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子どもも大人も、すべての人が、それぞれの能力をのびのびと発揮しながら、助け合っていきいきと暮らせる社会をめざします。 |
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そのためには、子どもも大人も、すべての人が、自分を大切にし、自助に努めるとともに、それぞれに異なる他者を重んじて、共助に努めることが大切です。すべての人が、そのようにして、それぞれの人間力を高めることをめざします。 |
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明治以降、日本はエリートを養成し、彼らが社会をリードして発展してきました。しかし、社会が成熟するとともに、少子化による人口減少の段階に入ったこれからの日本では、すべての人が、それぞれに持つ多様な能力を存分に発揮する社会にすることが、その発展のために不可欠です。
教育の目的も、その方向に明確に転換する必要があります。 |
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何を育てるか |
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育てるものは、一人ひとりの人間力です。人間力は、総合的な力ですが、自分の存在を肯定してよりよく生きようとする自助の意欲、他者を尊重して助け合おうとする共助の意欲、それらを基礎として、自己をとりまくさまざまな事象(人、社会、自然など)を知覚するための知性・理性と感性(情操)などが、その主な構成要素です。 |
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「教育」というと、すぐ学力向上を問題とし、学力向上というと、知識の習得を思い浮かべますが、それらは、人間力の一つの構成要素に過ぎないことを認識しておく必要があります。 |
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誰が育てるのか |
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総合的な人間力を育てるのは、学校だけではなく、社会の総体です。 |
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なかでも教育の第一の主体となるのは、自分です。自分が自分の人間力を充実させる努力をしなければ、成果が上がる筈はありません。 |
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知識を詰め込もうとしたり、いたずらに競争をあおったりして、自ら学ぼうとする意欲を阻害するのは、教育の形を採った人間力の破壊行為です。 |
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そのほかの教育の主体としては、企業その他の団体などがあります。家庭、学校、地域、企業その他の団体などがあります。 |
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それらが、ネットワークを組み、一人ひとりに最適なやり方で、教育を行う必要があります。 |
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どのように育てるか |
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人間は、誰しも、自ら育つ力を持っています。
教育は、それぞれの人のそれぞれの発達に応じ、自ら人間力を高める努力を支える形で行うのが、有効です。 |
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知識の習得について |
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知識の習得は、子どもたちがその必要性を自覚し、あるいは興味を持って積極的に取り組み、そして、その有用性を経験し、あるいは達成感を実感してはじめて、人間力として生きたものになります。
そのような習得をさせるためには、子どもたち一人ひとりに適した対応をすることと、子どもたちが余裕を持って取り組めるようにすることが必要です。 |
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子どもの人格形成にもっとも強い影響を及ぼすのは、親(親の役割を担う保護者を含みます)でしょう。 |
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親は、子育ての責任を自覚し、子どもをいつくしみ、その伸びる力を信じ、その個性や成長の実態をよく見ながら、子どもがいきいきと成長するように、それぞれの発達において最適な行動をとることが望まれます。 |
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たとえば、 |
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習慣づけ…早寝早起き朝ごはんなど、知力・気力.体力の基礎となる「生活のリズムの確立」に努めること |
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心身の欲求への対応…子どもの目線に立って、子どもが何を求めているかを把握し、正常な心身の欲求に応え、人間力を高めること |
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しつけ…社会で生きていくために守るべきルールを、子どもの発達に応じて身に付けさせること |
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奨励…自助努力と共助の努力を奨励すること |
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意欲の育成…子どもの行動や長所を大いに認めて賞賛し、自信を持たせ、人間力の基礎となる意欲を育成すること |
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などです。 |
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多くの親は、自分の育った時代の経験から、いまだに、子どもを偏差値のより高い学校へ進学させることと、特定職業の資格を取得させることが、子どもに幸せな生活をさせるために必要な教育だと考えており、そのため、子どもが消化できない勉強を強いています。しかし、少子化が進むこれからの日本では、このような考えは当たらず、かえって、子どもの意欲を喪失させる危険性が高いことを、多くの現象が示しています。 |
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子どもの幸せな生活をつくるのは、これからの日本では、子どもの人間力であり、特に、自助及び共助に対する意欲です。そのことを絶えず意識しながら子どもの育成に当たることが望まれます。 |
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今の日本で親が適切に子どもを育てるためには、親の子育てを支援する活動が必要です。特に、子育て支援のNPOが、地域の人々の協力を引き出しながら、子どもや親の交流、カウンセリングなどを行うのが有効です。行政当局がその支援を行うことが望まれます。 |
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また、自覚なしに不適切な子育てをしている親に対しては、学校や関係機関(スクールカウンセラー、児童相談所など)が連携して親を指導する仕組みをつくる必要があります。 |