更新日:2006年12月6日
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尊厳を支えるためネットワークを組もう
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去る10月17日JAホールで、尊厳を支えるためのケア・ネットの形成を訴えるシンポジウムを主催した。その時をもって、さわやか福祉財団は、従来のボランティア団体普及路線から、ボランティア団体を含むネットワーク形成路線へと重点を移すことを、対外的にも鮮明にしたのである。
この重点移行は、かなりのインストラクターの方々にとって、正直、抵抗感があると思う。
ふれあいボランティア団体の設立を指導することは楽しい作業だし、仲間が増えていくことは心弾むことである。これに対し、地域のケア・ネットを形成していく作業は、行政や医師会、社協など誇り高きプロをも相手にする、心労の多い作業だし、その結果いいケア・ネットが結成されても、労苦が報われることは少ない。
ふれあいボランティア団体が、十分に行き渡ったわけでもないし、今だって忙しく、楽しく飛び回っているのに、なぜネットワークなどという実態のよくわからないものの形成を背負い込んで、苦労する必要があるのか。
抵抗感の源にある思いを要約すれば、こんなところであろうか。
では、従来のままではどうなるだろうか。介護保険制度の運用を重ねるにつれ、地方自治体は、この制度と組み合わせてケアやふれあい、居場所づくり、生きがいづくりなどを行うボランティア活動が行われることの重要性を認識し出し、その育成を始めるようになっている。そういう情勢の中で、私たちが、従来の方法でふれあいボランティア団体の普及を主にした活動をしているだけでは、そのうち社会のニーズに遅れをとって行き詰まることが目に見えている。現にふれあいボランティアの普及に努めているインストラクターたちは、利用者のニーズの伸展に応じて、さまざまな相手に対し、、ケア・ネットの形成を働きかけるように進化してきている。
社会と人々のニーズは、尊厳を包括的に支える仕組みへと高まった。行政もケア関係者も、早い速度でその方向に動き出している。
しかし、その高い理想を実現するためには、私たちふれあいボランティア活動が、介護保険のサービスや医療などと連携して、その役割を果たすことが不可欠である。そのようなネットワークが形成されて初めて、ふれあいボランティア活動は社会から広く受容され、発展する力を獲得していくのである。
私たちは、地域のケア・ネットの実態調査自体が、その地域に、足らざるサービスを生み出し、欠けているネットワークの環を創り出そうという動きを誘発することを知った。
私たちの眼で、ケア・ネットの実態を把握し、共通認識に立って、その地域で確実に必要とされるふれあいボランティア団体の設立を働きかけ、その活動がネットワークの一環として行われるよう、リードしていきたい。
それだけの作業をするのは、これまで以上に負担があると思う。しかし、できた時の喜びは、これまでよりはるかに大きいであろう。人々の幸せの度合いが大きいほど、その仕組みをつくった達成感も、大きいからである。
そして、時に、幅広いネットワークの仲間たちと、ネットワーク拡大のためのイベントを催し、その夕べ、共感を分かち合う乾杯をしよう。
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(『さぁ、言おう』2006年12月号)
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