■ 助け合い移送への理解を国交大臣に申し入れ
10月1日から施行される改正道路運送法によって、助け合いのために行ってきた自家用自動車による移送が行えなくなっては大変である。
そこで、遅まきながら、同法案の国会審議が大詰めを迎えた本年5月9日、市民福祉団体全国協議会(市民協)の田中尚輝さん、ニッポン・アクティブライフ・クラブ(NALC)の高畑敬一さんらと、北側一雄国土交通大臣に対する申し入れをした。
大臣は、今回の法改正で新設する自家用有償旅客運送について、その登録を必要としない助け合い移送という類型があること、そして、その範囲について、謝礼金の額などある程度客観的な基準を省令又は通達で示す必要があることなど、当方の立場に一定の理解を示し、法案の最終審議日である5月11日国会(参議院国土交通委員会会議録7頁)で、その旨の答弁をした。この発言に対しては、後にタクシー関係の労働組合などが猛反発することになるが、私どもの立場からすれば、運輸行政を司る責任者が国民にとって当然の方針を表明したということになる。
そして、同日付の参議院附帯決議の三は、「NPO等による福祉有償運送について、好意に対する任意の謝礼にとどまる金銭の授受は有償に含めないこととするなど「自家用有償旅客運送」に係る有償の考え方及び運送対象者の範囲を示す(中略)よう措置すること。なお、移動制約者の自由な移動が確保され、地域における助け合い活動、ボランティア活動による移動制約者の円滑な移動が引き続き確保されるよう十分配慮すること」とした。そのような運用をすることが、法案を成立させる条件とされたといってよい。
■ 助け合いの実情とかけ離れた厳しい省令・通達案
私たちは、大臣の国会発言や附帯決議に従って省令又は通達に助け合いの移送の登録不要の範囲を明記するよう国土交通省に求めているが、本稿執筆時点において、同省事務局はこれに応じず、福祉有償運送の登録者に対し、タクシー事業者に準ずるほどに厳しい規制を行う省令(同法施行規制)案及び通達(福祉有償運送の申請に対する処理方針)案を公表している。
それらによれば、福祉有償運送は、介護保険法による認定を受けた者か障害者に対してしか行えない。だから、病気の人や妊産婦、障害のない児童、介護保険の認定を受けずに頑張っている歩行の不自由な人、地方自治体による地域支援事業の対象者、それに、所得が少ないためタクシー利用が困難な人などの移送による外出支援ができない。
また、対価(実費や謝礼)についてもタクシー事業者の合意が必要で、事務所を設け、福祉車輌を少なくとも1台備え、使用する車がボランティアの持ち込みであれば団体(運送者)がその使用権限を有し、使う全車輌について運行責任者を置き運行管理体制を整え、また、車の整備責任者も置き整備体制を整え、さらに、運転者が一種免許で運転する時は国交省が定める講習を修了する必要があるなど、助け合いの移送にそんな非現実的なことを要求するならとてもやれないと思うような要件が、これでもかという感じで並んでいる。
省令案及び通達案に対しては、当財団も市民協も意見を出しているが、考慮された事項は少ない。
■ 登録制度への対応
登録制度の内容については、その沿革に市民協の田中尚輝さんが深く関わってきているので、当財団としては市民協を支援する形で関わることとし、当財団は、登録を必要とせず、自由に行える助け合いの移送の範囲を広げ、明確にすることに全力を注ぐこととしている。
未だ通達案による明確化はされてはいないが、当財団と筆者の責任で述べれば、次のような助け合いの移送は、改正法令が施行されても、その適用を受けずに、自由に行うことができる。法改正により、登録を受けない限りすべての移送ができなくなったと誤解して、やめなくてもよい移送をやめ、利用者に多大の不便をもたらしている団体が見受けられるが、利用者に大きなマイナスをもたらしてはいけない。
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(1) |
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団体又は個人の自家用車(福祉車輌、セダン等)を用いて会員のための移送を行う運転者が、団体から給与、報酬、謝礼等を受け取り、また、団体がガソリン代を負担している場合であっても、利用会員から移送に対応する対価を受け取らないときは、「有償」ではない。 |
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(2) |
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団体が、外出支援を含む各種のふれあい・助け合いの活動を行っており、団体又は個人の自家用車による移送が外出支援の一つの手段として行われる場合において、活動に対する謝礼金の基準額が定められているが、その額が、移送をした場合であると否とにかかわらず同額であるときは、謝礼金は「移送」の対価とは認められない。 |
以上は、運送の対価を受領しないのであるから、そもそも「有償運送」に当たらない。 問題は、次の類型である。
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(3) |
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上記(2)と同じ場合において、活動に対する謝礼金の基準額のほか、運送に対する実費を負担する基準額が定められているときは、その実費がガソリン代程度にとどまる限り、有償運送とは認められない。 |
この類型に当たる団体も多く、国交省との詰めを続けるが、ガソリン代程度の実費の負担があるときまで「有償」と認めるのは、きわめて不当である。なぜなら、その程度の負担では、利潤を上げることはもちろん、人件費の捻出も不可能であるから、そのような運送は、自己犠牲による助け合いのために行う場合以外にありえない。そして、そのような場合には、利潤を目的とする運送のように、リスクを侵す運送をすることはありえず、したがって、有償運送として道路運送法による厳格な規制の対象とする合理的理由はないからである(本誌前号(その1)参照)。
この類型に当たる運送は、主として会員個人の所有する自家用車によって行われ、他の会員から需要が出た時に、たまたまこれに応じることができる会員に連絡があって、あとは当事者間の連絡で移送が行われるのであって、登録する福祉有償運送者に課せられる前述のさまざまな義務などは、運転する会員も団体も守りようがないのである。
福祉有償運送として登録義務が生じる助け合いの移送は、百歩譲っても、移送を主たる活動とする団体に限られるべきであって、各種の助け合いの中で、自家用車による外出支援が行われているような活動については、対象とすべきでない。
そうしないと、当該会員にとって重要な外出に対する支援活動が抑制されることになるからである。(この結末については、財団ホームページのニュースにてお知らせします)
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