政治・経済・社会
(財)さわやか福祉財団ホームページへ
 
定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2006年6月9日
立法へのチェック
  おかしい立法が多すぎる。
  ●税金は、人が自由に使える財産(資産、所得、費消)があるからこそ、その一部を公共のために拠出するのである。古今東西、課税の大原則であろう。ところが、今度創設される一般非営利法人制度について、財務省は、自由に使えない(つまり、利益を享受できない)資金についても、課税しようとしている。税法学者が容認しているのが、信じられない。
  ●そのうえ、一部の民法学者の妙なこだわりに引きずられて、これまでは認められなかった一般非営利財団(公益を目的としない財団)を、簡単にできる登記で設立できることにした。それが必要だという要望がないのに、である。そんなことをすれば、相続税等を節税するための財団が続々と設立されることは目に見えている。その社会的損失を、立法した人々に賠償してもらわなければならない。
  ●新しく設けられる公益法人に対する寄付を損金に算入できることとするのはよいが、公益事業による収入をすべて非課税とする措置をとらないのは、国や地方公共団体の公益事業と民間公益法人による公益事業との間に差を設け、前者の方が公益性が高いという時代遅れの感覚に基づくものである。
  ●道路運送法の改正で、NPOによる福祉運送は、限定された助け合いの場合を除いて、地域のタクシー業者が合意しない限り認められないという法制度になった。これではタクシー業者が、NPOの行う、利益を目的としない、助け合いのための移送についても、許認可権を持つのと同じである。このような制度にするためには、営利事業は非営利事業に優先するという理論が成り立たなければならないが、どこからそんな理屈が成り立つのか。国土交通省とタクシー事業が癒着していると思われても仕方ないのではないか。
  ●あるグループホームで火災が起き、死亡事故が発生したため、消防庁は、すべてのグループホームにスプリンクラーの設置義務を課する方向でことを進めつつある。グループホームの協会によると、経済的負担に耐えられず閉鎖せざるをえないグループホームが相当数出るという。受け入れられなくなった認知症の患者たちは、どうなるのだろう。そもそも、グループホームは、家庭と同じ類型の住宅ではなかろうか。ことを決めた審議会のメンバーは、ほとんどが消防の関係者であった。
  ●今回の診療報酬の改訂で、180日を越えるリハビリが認められなくなった。180日を越えてもリハビリが必要な患者はほぼ2割いて、リハビリの打ち切りは、回復の希望を奪い、廃者への転落を意味するという。一人でもそうなった患者が出たら、その措置を決めた人々は、損害賠償するのか。いや、賠償の問題ではない、生命の問題である。余りに冷酷非情な措置ではないか。
  ●ほかにも、市民を守るための当然の原則を歪めたり、業者の利益のため市民の自由な活動を封じたり、きわめてわずかな危険のため、多数が利益を受けている活動を制限したりする管理国家的立法が多い。民間法制局と超民間裁判所が必要である。
(『さぁ、言おう』2006年6月号)
バックナンバー   一覧へ
 [日付は更新日]
2006年5月2日 公益法人改革法案の注意点
2006年4月7日 道路運送法改正法案の問題点
2006年3月14日 市民後見人への挑戦を
2006年2月15日 時代の求める幸せと私たちの役割
2006年1月10日 新春巻頭言 人々にいきがいと幸せと平和を
  このページの先頭へ
堀田ドットネット サイトマップ トップページへ