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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2006年4月7日
道路運送法改正法案の問題点
  助け合いのためのボランティア活動の一環として行われる移送サービスは、利用者にガソリン代その他の実費程度を負担してもらう例が多い。国土交通省は、この国会に提出する道路運送法改正法案で、このような移送サービスを「自家用有償旅客運送事業」と定義し、登録することを求めた。ただし、法案は、タクシー業者その他の関係者が、タクシー業によることが困難であり、かつ、 地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため必要であることについて合意していないときは、登録を拒否すると定めている。
  しかし、この法案には、三つの大きな難点がある。
  第一に、道路運送法は、「適正な利潤」を含む運賃を得て運送事業を営む事業者に対し、「営業」の区域を定めるなどの規制を行う法律であって、要するに、営利を目的とする事業者の運送を規制することにより、道路運送を適正に行わせようとするものである。したがって、同法にいう「有償」とは、「利潤」を得ることを目的とするものと解すべきであって、利潤を目的としない助け合いのための運送において、その運送に要する経費の全部または一部の負担金がなされたからといって、これを「有償」と解すべきではない。助け合いのためにボランタリィな運転者が行う自家用車の運送は、自家用車に家族や友人が同乗する場合と同じ類型に属し、利潤を含む運賃が支払われることに対応して専門性の保証が要求されるタクシー事業とは類型を異にする。粗雑な立法によつて、ボランタリィな助け合い活動を制限し、身体の不自由な高齢者等の外出の自由を奪ってはならない。
  第二に、この法案が、タクシー業によることが困難でないときは自家用有償旅客運送事業の登録を拒否するとしているのも大問題である。
  地域の住民が自動車を利用する場合、自分の車を使おうとタクシーを使おうと、助け合いの一環として運送してくれる車に実費を負担して乗せてもらおうと、それは住民の自由であり、国は、タクシーが使えるところでは自家用有償旅客運送をやってはならないなどという権限はない。要するに、タクシー業者を優先させるべき合理的理由はなく、それは公共の福祉に反する立法というほかない。
  第三に、この法案が、タクシー業者との合意を要件としているのもおかしい。
  実情をみても、タクシー業者は住民のニーズに関係なく、助け合いの運送に反対するのであって、その合意を要件とすることは事実上助け合いの運送の道を閉ざすに等しい。タクシー業者に実質上の許認可権を与えるような制度は、制度のあり方としても、業者に偏した公共の利益に反する立法である。
  我が財団は、これまで移送問題に取り組んできた市民協(NPO法人市民福祉団体全国協議会)と連携して、法案修正を働きかけるので、ご協力をお願いしたい。
(『さぁ、言おう』2006年4月号)
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