更新日:2007年5月9日
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勤労者の「人間力再生」に向けて
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厚い勤労者の壁は、容易にはくずせない。
勤労者が、家庭と地域にも活動の場を持って、普通の暮らしをする時は、いつ来るのだろうか。
3年間、勤マル事業(勤労者マルチライフ支援事業)を実施してきた。リーダーの安村さん、企画や資料づくりに才能を発揮した奈良さんなど、8名の職員たちは、全国を飛び回り、何万人もの勤労者をボランティア活動に引き込んでくれた。各地の経営者協会の方々やNPO、社協の方々も知恵を絞り、汗を流して企業や勤労者に働きかけてくれ、勤マル事業が終了したあとも、各地で自主的に勤労者に働きかける活動が続けられる。
関係者の努力に頭が下がるのであるが、まだまだ、これからである。
基本的には、勤労者の生活が、会社中心から自分中心に切り替わらないと、勤労者の壁は破れない。心が会社中心になっていると、社会活動どころか趣味に打ち込む余力も生まれない。
自分中心の生活に切り替えるには、もちろん本人の自覚と意思が固まらなければならないのであるが、それだけでは難しい。
会社が残業を強いて本人から肉体的あるいは精神的な余力を奪い取ったのでは、自分中心の発想など生まれない。家族の理解と協力、本人が魅力を感じるような活動や仲間の存在なども、大きな条件となる。
幸い、昨年から、政府、日本経団連、連合の三者が、珍しく足並みをそろえて、ワーク・ライフ・バランスに取り組み始めた。先進諸国に歩調を合わせた面もあるが、良いことである。グローバルスタンダードで労働者にしわ寄せが行き過ぎたのに対し、人間性を回復しようというバネが健全に働いたのであろう。私たちはその二、三歩先の「働くことを選べる社会」を目指しているが、この経営の難しい時だから、ワーク・ライフ・バランスでとりあえずは十分である。経営者がその精神を体して、目先だけの利潤を追求する誘惑に抗し、労働力の再生、回復、持続可能な働かせ方を実現してくれるよう、強力に働きかけたい。それが勤労者とその家族に、人間的な暮らしをもたらす基盤になる。
本年度、私たちが厚生労働省から受託した事業は、特別な休暇制度普及促進事業である。私たちは、経営者たちに、特別休暇の普及をさせながら、勤労者に、それらの休暇を自分と家庭と地域のために活用するよう、働きかけていく。その趣旨から、この事業を「人間力再生プロジェクト」と名付けた。これまで勤マル事業に従事してきた大畠さんら4名が専従する。
引き続き、ご支援、ご協力をお願いしたい。 |
(『さぁ、言おう』2007年5月号)
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