政治・経済・社会
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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2007年4月7日

時代の流れを把握する

  今の政権は、時代の流れを読めないリーダーが、どれほど世の中を混乱させるかということを、実体験として教えてくれる。
  小泉前総理は、国内政治に関する限り、流れを把握して揺るがなかった。それが最後まで高い支持を確保できた理由であろう。
  流れの把握は、企業のリーダーにも、NPOのリーダーにも必要である。それができないリーダーは、仲間のエネルギーを浪費させる。
  では、時代の流れとは何なのか。
  一言でいえば、その時代、その社会における多数者の求める方向である。
  江戸時代の流れは、農耕の安定であろう。その末期から明治維新にかけては、農耕の安定に適した封建制度の打破であり、それ以後は近代産業の発展を阻害する身分制度からの解放が流れとなる。しかし、列強との争いの中で軍事優先の独裁体制に流れ込み、みじめな敗戦を体験する。その後は、西欧が先行していた民主主義、個人主義の社会建設に向かうが、経済のレベルが未熟であったため、国の経済発展を最優先する流れが、1970年代まで続く。この間、この流れに逆らって自由より平等を重視する思想が相当程度の支持を集めていたため、二つの流れのせめぎ合う時代が続いた。その中で、経済発展至上主義を支持する人々は、これを絶対のものとして信仰し、発想の依り所とするようになった。
  しかし、70年代、日本は経済面ではおおむね西欧に追いつき、国民も、一億総中流を体感して、多様な価値を追うようになる。流れは、経済至上という共通の目的を放棄し、これを支えた政官財の癒着、中央集権、画一的偏差値教育を改め、多様な個々人の価値観を実現する社会にする方向に変わるのである。戦後導入された民主主義、個人主義をその本来の意味で実現するための経済基盤が、やっと実現したといってよい。
  これが、大きな流れの基本である。
  流れは、多数者の求める方向であるが、多数者が必ずしも意識して明示的に要求するわけではない。個々に意見を聞けばむしろ逆の考えが強力に主張されたりするのに、選挙や広いアンケート調査などでは、大勢として、大きな流れに沿った判断が示される。たとえ短視的には自分たちに不利な場合であっても、それが選ばれるのである。
  今の流れを、キーワードで表わしてみよう。
  稼ぎから、いきがいへ。集団から、個人へ。争いから、共生へ。ぜいたくから、環境保護へ。偏差値から、個別能力の自発的発揮へ。強者優先から、すべての弱者をそれぞれに強者へ。中央から地方へ。国から世界へ。国の団結よりも個の多様性の重視へ。子どもの管理よりも、子どもの自立性尊重へ。働き方を決められる社会から働き方を選べる社会へ。ピラミッド型運営からネットワーク型運営へ。
  紙数の関係で以上にするが、このほかにも、いろんなキーワードがある。みなさんが重視するキーワードを教えてほしい。
(『さぁ、言おう』2007年4月号)
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