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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2008年9月10日

多様な能力を生かせる就業

  「頑張れば、いい人生になる」と信じられなくなれば、若者たちは、自棄的になるだろう。特に、自分に自信が持てず、世間の評価に従って生きている若者は、崩れやすい。
  画一的な教育と格差社会は、そういう若者たちを量産する。日本は、かなり危うい要素を抱え込んだ。
  抜本的な解決方法は、かねて提案している「働くことを選べる社会」である。すべての人が、それぞれに持つその能力を適切に生かせる職を選んで就職し、転職も不利なくできる社会になれば、閉そく感は消えるであろう。少子化が進むにつれ、そういう社会を構築せざるをえないと思うが、当面の解決策には間に合わない。
  そういう社会への道程として、まず、介護をはじめとする福祉の分野と、教育の分野で、さまざまな能力を生かせるポストを創り出していくことが、有効な方策だと考える。
  もちろん、福祉の質を上げ、福祉職のステータスを高めるためには、資格を設け、実力を上昇させるコースを設定することが必要である。教育職も同じである。
  しかし、福祉や教育の対象者は、特定されておらず、すべての人に及ぶ。そのニーズは実に多様であり、レベルも上下左右の幅がまことに広い。したがって、標準化されたコースや資格でカヴァし切れない対象者がたくさん存在するのである。
  たとえば大規模施設で優秀な管理能力を発揮する介護福祉士も、認知症のグループホームへ行けば、認知症の人の心や行動に適応できず、相手を混乱させ、自らも能力を持て余してストレスに苦しんだりする。教育でも、進学校のカリスマ教師が、不登校生徒のためのフリースクールでは劣等教師になる事例は、容易に想像できるであろう。
  そのように、福祉も教育も、個々の能力に適した多様なサービス提供者を必要とする分野なのであるから、一方で標準的なコースを設けてキャリアアップを図りながら、他方で、そこにおさまり切れない多くの人々のための多様なサービス提供者を用意することが必要となる。
  そして、これらは、市場原理に委ね切れない分野なのであるから、市場の就業競争に適応できない人々(市場からみれば、敗者)たちのさまざまな能力を活用することが、就業希望者にとっても対象者にとっても有益である。
  格差のひずみを正して人間の持つ能力を社会に役立たせるには、福祉及び教育という多量の人材を必要とする公的分野で、「多様な能力を生かせる就業」を実現させることが、その第一歩となるであろう。

(『さぁ、言おう』2008年9月号)

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