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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2009年7月9日

曲がったことはしたくない

 5月20日文部科学大臣及び厚生労働大臣から、新公益法人の最初の評議員の選任方法について、当財団の申請がそのまま認可された。曲がったことはしないという当財団の姿勢を貫き通すことができた。
 新公益法人の認定制度は、昨年12月1日から施行された。その制度では、新公益法人に移行しようとする旧財団法人は、まず旧主務官庁(当財団の場合は、文科省と厚労省)から、最初の評議員の選び方について認可を受け、それに基づいて新評議員を選び、それを前提として、内閣府(全国法人の場合)から、新公益法人の認定を受けることになっている。
 なぜ最初の評議員の選任だけを特別扱いしたのか。新公益法人制度では、業務が適正に行われるように監督する重い責任を評議員に与えており、その評議員の選任には業務遂行側に立つ理事は関与することができず、評議員会で選任する仕組みにしている。しかし、最初の評議員の選任は新公益法人への移行前に行うのだから、新法人の評議員会は存在しない。そこで、その選任が適切に行われるような特別な方法を定める必要があるということである。
 そこで当財団は、昨年5月、「最初の評議員の選任は、現評議員会で行う」という案を立て、理事会及び評議員会の合意を得た。新公益法人になれば評議員会で選任することになるが、旧法人の評議員も、そのまま新評議員になられたとしても何の問題もない、公正で識見豊かな方々ばかりであるから、この方々に新評議員を選んでいただくのがもっとも適切な方法だと判断したのである。
 ところが秋になると、内閣府は、旧評議員が新評議員を選ぶのは問題だと言い出した。その理由は、旧評議員は、特定の団体や勢力の利益に偏る判断をする恐れがあるから、そういう評議員会で選任すると公正さを疑われる新評議員が選ばれる可能性があるというのである。そして、新評議員について公正を担保するよう厳密な資格を定めるか、中立的立場にある者による第三者委員会をつくれという指導を公表した。もとより当財団の新定款案は、公正を確保するため新評議員の資格を非常に厳密に定めている。そして、当財団の旧評議員が公正な立場の方々ばかりであることに疑いの余地はない。当財団は、日本漢字能力検定協会のような一族あるいは特定グループの利益を図るような公益法人とは正反対の、市民による市民のための公益法人なのである。
 そこで昨年11月、旧理事、旧監事及び旧評議員による会を開いて、当財団は従来通りの方針で臨むことを確認し、旧評議員に対して新評議員の選任の準備をしていただくようお願いした。
 そして、昨年12月1日、新制度の実施と同時に、文科省と厚労省に、旧評議員会で新評議員を選ぶという方法の認可を申請したのである。
 太田達男さんが率いる公益法人協会も当財団と同意見で、内々で折衝をされたが、同協会の主務官庁である総務省の態度はきわめて固く、第三者委員会による選任以外の方法は絶対認めないとの態度であったので、新公益法人認定のモデルとして認定を急ぐ太田さんは、ホームページに「苦渋の選択」をする旨の一文を発表し、第三者委員会方式に切り換えられた。
 しかし、行政が決めつけている第三者委員会方式は、執行側が権限を独占して理事会や評議員会が形骸化しているような公益法人には有効であろうが、その第三者を選ぶのが理事なのであるから、公正な選任を担保する方法として優れた方法とは言い難い。そういう方式を法令に何の規定もないのに唯一のものとして事実上強制するやり方は、民の自発性を引き出そうとする新公益法人制度の第一歩となる運用として好ましくない。したがって、当財団は、昨年12月24、25日の理事会、評議員会でそのことを確認し、その評議員会は、主体的に選定作業を行い、新評議員候補を選任した。厚労省は、新定款の厳しい規定や個々の評議員の立場、これまでの運営などをじっくり調べて、当財団の申請を認めることを決め、また、文科省も当財団に対する事業の監督を担当している生涯学習政策局は、当財団の申請を認めることを決めたのであるが、同省の官房が首を縦に振らない。理由は、内閣府の行政指導に反するの一本槍である。
 本年3月の事業年度終了の時期を迎えても事態は一向に進まず、私も内心おおいに焦った。第三者委員会方式を取るのは簡単であるが、それでは筋を曲げることになるし、当財団のためにボランティアとして公正な判断をしてくれてきた旧評議員の方々に失礼である。といって文科省の上層部に働きかけるようなことは、元検事として良心が痛む。法的手段もありうるが、たった1回限りの旧主務官庁の認可だから先例をつくる意義は乏しいし、時間がかかり過ぎる。相談した方々は、筋を通して頑張れと言ってくださる。私は、直接交渉を担当している平山熊三郎さんには申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、文科省の生涯学習政策局担当官が官房を説得する努力を続ける限りは、我慢して待つことにした。
 じりじりする中、5月12日、ついに官房了承という内々の通知が来て、平山さんと抱き合って喜びを交わし、職員全員でバンザイを叫んだ。
 文科省からは、先例になっては困るので、あまり外に言わないでほしいと要望があったが、旧主務官庁を説得する手間と時間がかかりすぎるから、私も当財団の方式をお勧めする気はない。
 旧主務官庁との話し合いで、当財団の認可申請は本年5月14日にしたこととし、正式認可は5月20日に行われた。内閣府に申請した新公益法人への移行についての事務局の調査は、もう始まっている。
 新公益法人が認定されれば、税の面で大きなプラスになるし、それを機に、したいこともいろいろある。当財団職員一同心を一つにし、今後も筋を曲げず、しっかり前を向いて進んで行きたい。

(『さぁ、言おう』2009年7月号)

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