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定期連載 暖流
更新日:2014年10月9日
大丈夫ですか?町長さん
 ボランティアをすすめる講演を聞いてくれたある町長さんが言った。
 「国は要介護の1とか2とか3を市町村がやれと言うんですよ。困りますよ」
 「町長さん、それは要支援の1、2の人に対する生活支援の話でしょう」
 「そうですか。どちらにしても、町には金がない」
 「いや、今まで来てたお金は来るんじゃないですか。助け合いを広めて節約することは大事でしょうが」
 「いやまあうちは特養を結構つくりましたから」
 〈えっ、特養待機者がそこそこいるじゃないですか〉
 最後のせりふは呑み込んだが、この町の善良な高齢者を思うと心が痛む。
 「堀田さん、この間おっしゃってた新地域支援事業、うちは今年手を挙げることにしましたよ」
 晴れ晴れとした顔で報告してくれたのは千葉県流山市の石原重雄副市長である。
 市職員当時からボランティア団体をバックアップし、介護保険のサービスと助け合い活動をうまく組み合わせて市民の幸せをつくり出してきた人である。
 だから、要支援者に対する生活支援を、市民の助け合いを中核にしてやると聞いた時、彼は、「うちの市ならやれる」と思った。そして、助け合い活動の働きかけやそのネットワークをつくる仕掛け人(生活支援コーディネーターとそれを支える協議体)を国や自治体の費用で設置するという新地域支援事業を、先頭を切って今年始める体制を整えたのである。
 流山市の高齢者は、幸せである。
 私は、この3月から全国道府県で31回、自治体や地域包括支援センター、社協の職員、地縁組織やNPOのリーダーなどを対象にフォーラムを開き、新地域支援事業への積極的取組みを訴えてきた。厚労省も道府県も全面的に協力してくれた。
 反応は、上々である。自治体も、こわごわながらやる腹を決め始めている。
 その中で、冒頭の町長のような人がまだいることが、悲しい。
(京都新聞「暖流」2014.8.24掲載)
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