四年間検討されてきた公益法人改革とは、要するに、これまで主務官庁ががっちりと監督権を行使して締めつけていた公益法人を、その監督から解放して、内閣府の監督に一本化し、それによってのびのびと民間の力を発揮してもらおうという改革なのである。閣議決定も、「現行の主務官庁による設立許可制度を廃止し、二一世紀の我が国の社会経済にふさわしい透明性の高い新たな仕組みの構築を目指す」とうたっている。
ところが、昨年十二月に内閣官房の行革推進事務局が公表した新制度の概要を見ると、とんでもない仕掛けがあちこちに施されている。
たとえば、内閣府が公益法人の認定をする際には、「関係行政機関の長からの意見聴取」を行うことになっている。こんな話は、これまでの改革論議の中で一度も出ていない。関係行政機関、つまり従来の主務官庁の意見を聴けば、またぞろああでもない、こうでもないとさんざん文句をつけて、省庁の都合のよいように、変更させられることは目に見えている。それでも従来ならそれだけで済んだところを、今回はさらに内閣府の認定も受けなくてはならないことになる。これではこれまで以上に無駄な手間がかかる改悪というほかない。
政府が今度の改革で目玉にしていたのが、内閣府に設ける有識者会議である。この会議が、民間の立場で公益法人の認定について意見を述べるから、行政が恣意(しい)的に、つまり、自分たちに都合のよいように公益法人を認めたり認めなかったりするようなことはないと政府は説明してきた。ところが、今回発表された概要を見ると、従来は有識者は民間人から登用すると言っていたのに、その文言がすっかり消えているし、有識者会議の審議は自発的には行えず、内閣総理大臣の諮問があってはじめて行えるという制限的なものになっている。有識者会議の答申の拘束力については何ら触れず、決定権は行政側にあることが当然のようになっている。これでは、今まで国民をだましてきたことになりはしないか。
一方、これまでの政府案に対し問題を指摘してきた点は、改められていない。たとえば、今の制度では公益法人を直接設立できるのに、新制度ではそれができず、まず一般非営利法人を設立し、その運用実績を見せたうえでないと、公益法人の認定を受けられないことにしている点である。これまで以上に二重手間を課せられることになる。
また、これまでなかった、公益を目的としない財団法人の設立を認めることにしたのも、改悪である。そんなことをすれば、相続逃れや差押え逃れの財団法人が次々に出てきて、そうでなくても役人の天下りの温床として評判のよくない公益法人がますます悪用され、人々の信用を失うことになる。
これでは、民間の良い活力を一層抑圧し、悪い活力を伸ばす法案になる。もう一度原点に戻って出直すべきであろう。 |