政治・経済・社会
(財)さわやか福祉財団ホームページへ
 
定期連載 辛口時評
更新日:2005年10月6日
アジアへの投融資を

 郵政民営化の争点をぎりぎり詰めれば、郵便貯金および簡易保険事業失敗のリスクを、国民が負うのか事業者(経営者、職員と株主)が負うのかということになるだろう。郵便事業については、過疎地での集配は、税金を投入してでも維持するということで一致しているようだから、争点からはずしてもよい。
 現在のままで郵貯や簡保の事業を進めれば、預かった資金が民間にまわらず、経済活力の発展を妨げる。その不利益を負担するのは、一般国民である。預かった資金で国債を大量に買うために、国の借金体質が改まらないことによる不利益も、国民がこうむる。そして、心配されているように、資金の運用益があがらず、あるいは特殊法人などへの貸し付けが焦げ付いたりした場合のリスク負担は結局税金になる。
 これに対し、民営化して政府補償も止めれば、事業の失敗のリスクはすべて事業者が取ることになる。経営合理化のため職員のリストラが行われる可能性もある。郵便事業の関係者が民営化に反対するのは当然であろう。
 ここまでは、今回の郵政民営化問題で、議論されていることである。ここでは、民営化しても事業発展させる方策がないかを考えたい。
 民営化しようとしまいと、郵貯や簡保の事業運営がやがて困難になると考えられている理由は、資金をうまく運用できないと思われているからである。それは無理もないことで、長らく大蔵省に資金運用を委ね、その資金が財政投融資で使われてきたのだから、郵政公社には民間融資のノウハウはない。
 そうなると、普通なら民営化して喜ぶのは民間の銀行や保険会社のはずで、郵貯や簡保の顧客と職員を獲得するべく民営化推進運動をするはずであるが、そういう動きはない。それは、日本の銀行や保険会社も、それだけの意欲がないからであろう。その理由は、銀行も保険会社も、長らく行政当局に規制され、護送船団方式でやってきたからである。
 そういう状況から、民営化反対論者は、いずれ郵貯や簡保が外国資本の手に落ちるというが、その前に、将来性がある会社にできないだろうか。
 私は東アジア、東南アジア諸国への投融資があるのではないかと思う。彼らは資金を求めている。そして、彼らへの投融資は、長期的には、全体として高い利益を上げることは間違いない。
 問題は、個々の投融資についてのリスクが高く、民間の資本が進出をためらうことである。そこで、新民営会社は、この分野の人材を獲得し、アジアに進出している日本企業と協力し、さらに、リスクがきわめて高い投融資については個別に政府が適切な方法で補償して、大胆に事業を展開してはどうであろう。国際協力銀行とは異なる視点、対象、方法で行う分野は、少なくないだろう。そしてそれはアジアの発展と平和に貢献するから、新会社だけに止まらず、大きく日本国民の利益にもなると思うが、いかがであろうか。

(神奈川新聞掲載/2005年9月5日)
バックナンバー   一覧へ
 [日付は更新日]
2005年9月16日 先駆性ある「基金21」
2005年9月16日 日本はAUを目指せ
2005年9月16日 放任は愛情ではない
  このページの先頭へ
堀田ドットネット サイトマップ トップページへ