郵政改革の方向が決まって、医療改革に焦点が移った。
経済財政諮問会議は、経済指標と連動して医療費総額の上限を決めよという。これに対して、厚生労働省は、医療費の無駄を省くなど、個々の政策を積み上げて、医療費を適正化したいという。 同省の試算によると、二〇〇六年に二十八兆円と見込まれる医療費が、二五年には、現行制度のままだと五十六兆円になるのが、同省の制度合理化案を実施すれば四十九兆円に抑えられる。諮問会議の、概ね2%程度の経済成長と仮定してGNP(国民総生産)比7〜8%を上限とする案によれば、四十二兆円が上限という計算になる。 医療関係者は、厚生労働省の案でも厳しくて適正な医療が行えないのに、諮問会議の案では医療が破壊されると、目をむいている。 私は、医療の内容を適正にすることにより、無駄な医療費を節約することは大切なことだが、諮問会議の考え方は、姥捨ての思想だと考える。
医療費が増えるのは、高齢者が増え、その医療費が掛かるからである。 その状態を家庭に例えれば、祖父、祖母が長生きして薬代が掛かるようになり、子どもの数が少なくなって、その稼ぎで薬代を賄うのが辛くなっている状況だといってよい。日本の人口構成は、少子高齢化の最中で、ピラミッド型から筒型に移る過渡期特有の現象として、高齢者の層が若者の層よりやや多い、逆ピラミッド型になっている。だから、高齢者の医療費負担が特別に重いのは当然のことである。 しかし、数十年経てば、逆ピラミッド型は解消し、人口構成は筒型で安定すると予測される。いつまでも逆ピラミッド型が続けば、人類は自ら滅んでいくことになるが、それは考えられず、必ず歯止めが掛かると信じてよいからである。 家庭でも、長生きした祖父、祖母に薬代が掛かり、稼ぎで間に合わないとなると、家の改装費を削り、あるいは借金してでも薬代を払うであろう。歯を食いしばって頑張れば、やがて元に戻ることが見えているからである。 稼ぎに合わせて必要な薬代を削るようでは、動物以下と言われても仕方がないだろう。
|