更新日:2010年9月22日 |
滞在型から巡回型へ |
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つれあいを失くして、一人暮らし。寄る年波に勝てず、足腰が弱って、買い物にも行けない。しかし、施設には入りたくない。お金の心配もあるが、それより、見知らぬところに移るのが心細いという思いが強い。自宅にいれば、ご近所の昔からの仲間も顔を出してくれるし、何といっても居心地がいい。
そういう思いの人が、これからもどんどん増えていく。
講演で「自宅で最期を迎えたいと思っている方?」と聞くと、ほとんどの手が上がる。ところが「本当にそうできると思っている方?」と聞くと、かなりの手が下がってしまう。
たしかに、今の介護保険では、重い介護が必要になると、一人では暮らせない。それは、訪問介護サービスが滞在型になっているからである。つまり、ヘルパーさんが来てくれても、1日のうちたとえば2時間ずっといて、その間にまとめていろいろなことをやってくれる方式になっている。しかし、人は3回食事をするし、排泄は何度もする。それをまとめて済ますことはできない。
そこで、介護保険の滞在型サービスを可能な限り巡回型サービスに変えていこうという動きが始まっている。巡回型というのは、必要な時に行って、必要なことだけ済ませて帰るというやり方である。お医者さんの往診のようなやり方である。必要な時に行くのだから、深夜何時であっても排泄の世話に行くし、痰(たん)の吸引が必要なら看護師さんも飛んで行く。
「そんなことが可能か?」と思うかもしれないが、施設では必要なサービスを全部やっているのだから、そのサービスを自宅に届けるようにすればよいのである。
厚生労働省の研究会が始まっていて、私は座長を務めているが、かなりの範囲までやれそうだということが見えてきた。
まもなく10月には中間報告ができると思うので、楽しみにしていてほしい。 |
(京都新聞「暖流」2010年9月12日掲載) |
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