更新日:2011年11月10日
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過疎の被災地の復興 |
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東日本大震災は、政治のリスク管理能力の欠如、地方自治及び首長の能力の重要性、地域経済維持の難しさなど、多くの問題をクローズアップしたが、その一つに過疎地の問題がある。
私たち(さわやか福祉財団と全国の仲間たち)が、「地域包括ケアの町への復興応援団」として取り組んでいるモデル地区の中には、過疎の地域も含まれている。
自治体は住民のアンケートを取ったり懇談会を開いたりしているが、過疎地域やそれに近い地域の人々の中には、もうその地域を離れるという人たちが少なくない。その内訳を見ていくと、若者や移り住んできた人たちなど、その土地と職のつながりのない方が多い。大震災を機に、一気に過疎化が進む気配が漂う。
これに対し、漁業その他土着の生業を持つ方々は、土地への愛着が強く、絆も強い。
そういった方々は、津波に流された集落に近い高台に、まとまって住みたいという思いが深い。
そうはいっても高台の土地は乏しいから、林を拓くなどして造成するほかないところも多い。
「一軒家でなくていい。何階かの集合住宅で十分だよ。私らも年を取ってるから。ただ浜に、仕事場は要るけれどね」
そういう希望が多い。
「都会みたいに何百という世帯がまとまるわけじゃないから、集落ごとにいろんなサービスを揃えてくれなんて言えないよ。町の中心部に郵便局とかスーパーとか診療所とかヘルパーさんたちがいてくれれば、私ら、何とか出て行くからね。助け合ってでもね」
小さな村で家族の生活を支えてきた女性たちは、たくましく、自立しており、謙虚で互助の精神に満ちている。
過疎化しつつある地域の被災者たちとじっくり話すうち、復興の姿が浮かび上がってくる。
海沿いにちらばっている10、20の集落の方々の生活を支える中心地がある。そこには、行政の出張所や郵便局、時に銀行、小さな消防、診療所、マーケット、ガソリンスタンドや車の修理工場など、最小限度のサービスが揃っている。学校や保育園もある。ここも流されているが、それらの機能を、高台に揃える。これは、周辺の集落や個々に散らばって住んでいる住民の方々を支えるために必要不可欠な機能である。そして、間違いなく進んでいる高齢化に対応するために、中心地には、介護と医療のサービスを届けるための介護・看護ステーションと、生活サービスを届ける配食その他のサービスステーションが欠かせない。
問題は、それだけのサービスを個別に揃えたら、供給力過剰で、行政機関は暇すぎ、営利事業は成り立たないことになる地域が多いことである。これが過疎地問題の縮図である。
それに対応するには、まさに特区として、地方の行政関連機能の集約と、営業の集約をするしかない。簡単に言えば、一人の公務員が、市の職員兼警察官兼郵便配達員兼消防団員くらいは兼業すればよい。そんな無茶なと思われるだろうが、民間人の船長さんに逮捕権まで与えているのだから、特区でやれば可能である。憲法違反にならない限り、法律はつくれる。
営業は、本業がコンビニ業者でも商社でも宅配業者でも生協・社協連合でもよいが、一つの営業体に銀行から小売業者、宅配、運送その他のサービス業のほか、在宅介護・看護まで、必要なサービスをすべて提供し、求めに応じて届ける包括的事業を認めるのがよい。一人で兼業するケースが出るだろうが、公務の兼業に比べれば、こちらの方がたやすい。
それぐらいの思い切ったことをしなければ、これから確実に進む過疎化への対応はできない。その先鞭を、被災地でつけてほしいのである。 |
(電気新聞「ウェーブ」2011年11月4日掲載)
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