政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2011年9月15日

説得の仕方が違う?
 「税と社会保障」の話である。簡単に言えば、社会保障の維持、充実のために、とりあえず消費税を10パーセント上げるかという話である。
 それが必要なことは、投票に行くような国民は大方わかっている。だから、10パーセントの増税を掲げても、自民党の人気は下がらない。
 菅総理がそれを言って負けたのは、気楽に言ったからである。「わかってはいるけど、気軽に言わないでくれ。それがどんなに大変なことかわかっていない人にやられたんじゃたまらないよ」というのが国民の気持ちである。
 頭ではわかっている国民に、数字を並べ立てて増税の必要性を説いても、白けるばかりである。白けるどころか、バカにされたと感じてムカついてくる。逆効果である。
 では、淡々と増税を提言すれば国民は賛成するかというと、そうはいかない。大多数の国民にとって消費税5パーセントの増税は、まことに辛いのである。これは理解(頭)の問題でなくて、ハートの問題である。そして、ハートは頭より強い。
 では、政治家は増税に反対するしかないのか。
 そうではない。国民は頭ではわかっているのだから「あの政治家は選挙のために嘘をついている。不誠実だ」と判断されてしまう。
 この事態をどう打開するのか。
 国民のハートに訴えるしかない。
 一つには、このまま増税なしに進んだ場合に、国民のすべてがどんなひどい目に遭うのか、そのシミュレーションをわかりやすく示すことである。ギリシャになるのか、アルゼンチンになるのか。学者にいくつかの姿を描いてもらえばよい。あとは、国民が自己保存本能で判断する。
 二つは、このまま進んだ場合に、高齢者の多くがどんなに悲惨な事態に追い込まれるか、これも具体的に描き出してもらうことである。多くの国民の利他の心が動かされるであろう。
 三つは、増税でさらに追い詰められる弱者の救済策を用意すること。
 四つは、この増税がどれだけのプラスを国民にもたらすかを、これも具体的に描くこと。
 それだけの汗を流した政党が、はじめて国民の信頼を獲得できるのであろう。

(時事通信社「厚生福祉」2011年8月12日掲載)

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