更新日:2011年7月28日
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地域包括ケアの町へ〜東日本大震災復興の青写真 |
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「地域包括ケア」という言葉は、福祉の関係者以外には、あまり知られていない。
しかし、地域包括ケアは、福祉のあり方を180度変えるだけでなく、町のあり方を変え、私たちの生き方、住まい方を大きく変えるケアの仕組みである。
それは、どんな状態になろうとも、住み慣れた自宅で、最後まで暮らすことを可能にするケアである。
その仕組みができると、たとえ一人では食事ができず、排せつができなくなっても、自宅で暮らすことができる。朝起きた時から夜中まで、必要な時にヘルパーさん、看護師さんが自宅に来てくれて、必要な支援をしてくれるからである。
その仕組みが町中に行きわたれば、これまでのような大きな施設をつくる必要がなくなる。もちろん、一人暮らしで徘徊癖のある認知症の人など、見守りが必要な人は、一人で自宅に置くわけにはいかないから、見守りのある住み家を用意する必要はあるが、それはグループホームなど、比較的「家庭」に近い住み家であれば足りる。
そのかわり、町には、介護や看護、食事その他の生活サービスを、必要な時にすぐ届けるセンターが必要となる。
これは、これまでそういうサービスを届けていた事業者が、連携してつくればよい。医療ともしっかりネットワークを組む必要がある。
そういうサービスがそろうと、これまで親の世話だけでは自宅で暮らせないため、施設などに入れられていた障がい者や子どもなども、自宅で暮らせることになる。
訪問診療でかなりの病人までみることができる地域医療の充実が伴えば、かなりの人が、住みなれた自宅に暮らせる。
町のあり方が、変わるのである。
そういう町ができれば、人の生き方、住まい方も変わる。これまでは、人生の最後をどの施設、病院にするのか、その時になるまで決められなかったために、自宅を購入して暮らしていても、何となく仮住まいのような、落ち着かない気分がただよっていた。多くの人は子どもと暮らしている働き盛りの時に、通勤や子どもの通学の便を考慮しながら自宅を購入し、退職して夫婦暮らしになっても、ずるずるとそこに暮らしていた。
しかし、地域包括ケアの仕組みができると、退職時に、思い切った暮らし方、住まい方の選択ができる。最後まで自分らしく生きる人生を築くことが容易になる。
経緯の説明は省略するが、大震災と関係なく、介護保険制度は、現在の滞在型介護から24時間巡回型介護に変えていく方向を決めていた。さきに述べたような24時間巡回型介護は、地域包括ケアの中核となる仕組みである。それは、多くの人々の「最後まで自宅で自分らしく暮らしたい」という望みにこたえるための大きな進歩なのである。
そうとなれば、東日本大震災、特に津波で壊された町(集落)を一から復興する時には、これを目指さない手はない。被災していない町よりもずっと安心して暮らせる町をつくるのである。
この復興の構想は政府が賛同し、仮設住宅の段階からこれを目指すべく、予算もつけている。
被災者、そして被災自治体と力を合わせ、幸せの町を目指したい。 |
(「生産性新聞」2011年7月15日掲載)
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