更新日:2011年5月12日
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目指す復興の姿 |
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仙台のボランティア仲間、伊藤あづささんは、仙台駅近くのビルで、手軽なレストラン「シャーレ大町」を経営している。自閉症の若者4人が中心のお店だ。
「震災後3日でオープンしたんだからね、私たちも助かったよ」と、同じビルにオフィスを構えているNPOの頑張り屋さんたち。
「不思議だわ。震災の後、自閉症の若者みんな、責任をもって仕事するようになったのよ」と、伊藤さんはうれしそう。
避難所生活も2カ月近くなるというのに、お会いした皆さん、前向きであった。
私は、「地域包括ケアのある町への復興図」を持って、宮城県庁や大船渡市、南三陸町その他いくつかの行政の復興担当者、避難所のリーダーや地域のボランティアたちを訪ね、働きかけてきたのであるが、「よし、やりましょう」と、頼もしい反応を次々に頂いた。
地域包括ケアという言葉は、まだ耳慣れない方もたくさんいらっしゃると思うが、簡単に言えば、どんな状態になっても最後まで自宅で暮らせるようにする医療、介護ということである。具体的には、医師、看護師、ヘルパーさんが、24時間いつでも必要な時に、自宅を訪問して必要なサービスをするし、食事のサービスも365日3食、お届けするというものである。
そういうサービスをするには、いろいろなサービスを自宅に届ける拠点が必要であるが、建設費の高い施設は要らない。
そういう町の図面をお見せして説明すると、大船渡市立大船渡北小学校の避難所のリーダー沼田さんも、仙台市立岡田小学校の避難所リーダー黒澤さんもすっと理解して下さり、「いいですね。みんなに話しますよ」と、さわやかに積極的であった。
私が演壇からマイクで岡田小学校に避難している方々に、「そういういい町に復興しましょう」と訴えると、食事時だったのにうなずきながら聞いて下さり、最後は2度も大きな拍手を頂いた。その前向きさが心に染みた。 |
(京都新聞「暖流」2011年5月8日掲載)
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