更新日:2010年12月9日
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菅総理、戦略は? |
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菅総理、あなたの国家戦略はどうしたのですか。戦略室は、機能してますか。
政治主導というのは、政治が戦略を示し、官僚がそれを実施することだと思います。ところが今の政権は、戦略を示さず、官僚が財源不足に引きずられてずるずる後退するのを追認しているだけのように見えます。
あなたの「教育、介護にお金を入れて強い経済、強い社会保障をつくる」という旗印は、どこへ行ったのでしょうか。それを実現するための戦略が一向に見えません。それとも、「強い財政」をつくるための増税が頓挫したから、旗印は全部下ろしてしまったのでしょうか。それでは「コンクリートから人へ」は実現されず、何のための民主党政権かわかりません。政権交代で改革を期待した多くの人々は、がっかりし始めていると思います。
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市民は、子どもたちがいきいきと育つように、子ども園、子育ち支援施設、進学競争に心傷ついた生徒たちのための学校などを切実に求めています。
市民はまた、最後まで安心して暮らせるように、在宅介護サービスの充実(24時間巡回サービスの全国普及)や、グループホ―ム、地域密着型サービスなどをそれぞれの地域で求めております。
これらに対する需要は、道路その他の公共工事に対するそれよりもはるかに広く、深い。しかも、これからまだまだ増えることは明白なのです。
こういう話をするとすぐ「財源がない」という渋い顔をする人がいますが、財源がほとんど要らない方法があります。
高齢者が貯め込んでいる資金を活用してはいかがでしょう。
日本経済活性化の決定的方策は巨大な個人資産が市場に出ることでしょうが、高齢者はそう簡単にはお金を使いません。使う必要がないのです。
高齢者が望んでいるのは、自分及び配偶者が、最後まで尊厳をもち、楽しく、安心して暮らせる生活です。次に望むのは、孫がいきいきと育ってくれることでしょう。
そこで、市民が最優先で求める教育、介護などの施設やサービス事業に、高齢者の資産による投資を誘導してはいかがでしょう。
投資者に対しては施設やサービス事業への参画権(自分の好みに合うように設計する)を与え、また、優先利用権(入居権、入園権その他のサービス受給権)を与えます。一般市民も、利用できる範囲が大幅に広がりますから、不平は出ないでしょう。
さらに、投資分の相続税は当分免除するとか、回収をある程度まで政府が保証するとか、誘導策はいろいろ考えられます。
それこそ政治主導で戦略を示し、国家戦略室を中心に、官僚たちに具体的な戦術を練らさせてはいかがでしょうか。
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この戦略のもう一つの狙いは、雇用の拡大です。
今は失業者、就活者が多いのに、介護や看護の人手が足りません。子育ち支援や特別な教育支援を行う人手も決定的に足りず、親が苦しんでいます。
このままでは、親は見捨てられ、子は引きこもる悲惨な日本社会に堕ちて行きます。
一般的な職業訓練とは別に、これらの分野については、特別な職業訓練と就業支援を行う必要があります。援助を必要とする人の心に共鳴し、包み込む感性を伸ばし、心の交流を豊かに行える能力を育てる点において、特別な訓練を必要とするからです。
無償の教育と就業のきめ細かい指導をすべきでしょう。また、優れた外国のプロを歓迎しましょう。
最小不幸社会を創ることは政治の基本的使命であるという、あなたの言葉を、あなたに謹呈します。 |
(電気新聞「ウェーブ」2010年12月3日掲載)
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